経済インサイド

米ゼロックスとの提携解消、富士ゼロックスが得るものと失うもの (2/2ページ)

 一方、失うものも大きい。「ゼロックス」の名前が使えなくなることだ。

 富士ゼロックスは3年4月1日付で、社名を「富士フイルムビジネスイノベーション」に変更する。5年3月末までの2年間は、暫定的に「富士ゼロックス」ブランドをアジア太平洋市場で独占使用できるものの、「ゼロックス」に代わる新たなブランドを早急に確立する必要がある。

 欧米や昭和のころの日本では、コピーすることを「ゼロックスする」と表現するほど、ゼロックスという名詞が浸透している。競合他社の幹部は「成熟市場の欧米に新ブランドで参入するのは富士といえども容易ではない」と指摘する。“独り立ち”への移行期間に新ブランドを浸透させることが成功へのカギを握る。

 富士ゼロックスの玉井光一社長は、産経新聞との単独インタビューに応じ、3年3月末の米ゼロックスとの提携解消後の欧米市場での事務機器の販売戦略について、「まずはOEMで機器を供給し、様子を見ながら徐々に自社ブランドを広げる」と語った。

 玉井氏は、提携解消の狙いを「ゼロックスとは販売地域や特許、ブランド使用料などたくさん問題があり、それをあるべき姿に見直したかった」と説明。その上で、「非常にいい条件で収束できた」と評価した。

 新たに進出可能となる欧米市場をめぐっては、「すでにOEM供給の話が3社以上から来ている。富士ゼロックスの商品は堅(けん)牢(ろう)で紙詰まりせず、ノイズやセキュリティーも強いといわれている」と強調。知名度不足が懸念されていることに対しては「『ゼロックス』というブランドは大きいが、(親会社の)富士フイルムホールディングスもかなり認知度が高い企業だ」と述べ、自社の新ブランドでもシェアを伸ばすことが可能との見通しを示した。「国内で営業とQCD(品質・コスト・納期)のシステムをしっかり持っているので、欧米でも勝っていけるだろう」とも語った。(桑原雄尚)

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