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新型コロナで検索大手がデマ抑止を本格化 信頼できる情報優先表示

 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、米フェイスブックやグーグルといったSNS(会員制交流サイト)・検索大手が、デマや偽情報の拡散を抑止する対策に乗り出した。世界保健機関(WHO)や各国政府のサイトなど信頼できる情報源を検索結果の上位に優先表示し、デマや偽情報の投稿を削除するなど取り組みを強化している。

 偽投稿の削除強化

 フェイスブックはファクトチェック団体の協力を得て、パニックを引き起こす間違った治療法などの投稿削除を強化している。画像共有アプリ「インスタグラム」はデマを広める「ハッシュタグ(検索の目印)」を削除。同社広報は「人工知能(AI)や人の目で危険な情報を察知している」と説明する。ツイッターはサイト内検索した場合に、厚生労働省など信頼できる情報源のアカウントやリンクを表示している。

 グーグルは「コロナウイルス」と検索すると、WHOなど信頼性の高い情報へのリンクを表示する「SOSアラート」を始めた。これまで台風や地震といった自然災害時に行っていたが、感染症対策では異例の対応だ。根拠のない治療法など悪質なネット広告の遮断も実施する。グーグルのピチャイ最高経営責任者(CEO)は6日、人々を偽情報から守るため「新たな脅威を監視し続ける」と表明した。

 日本勢も対策を本格化している。LINE(ライン)は参加者が出入り自由で語り合う「オープンチャット」という機能で偽情報の監視に取り組む。文章、画像の投稿プラットフォーム「ノート」を展開するピースオブケイク(東京)は、投稿に公的機関の情報をまず確認するよう注意書きを付け加えている。

 表現の自由侵害懸念

 こうした背景には、欧州連合(EU)がインターネット上のデマや偽情報の拡散を抑えるため、法制化や規制作りを進めてきたことがある。日本でも総務省が2月に「プラットフォーマー」と呼ばれるIT企業に自主的な対応を促すことを柱とする報告書をまとめた。偽情報に振り回された2016年の米大統領選を念頭に、世論を二分する政治や社会問題に対応するのが狙いだった。総務省幹部は「日本では政治問題より災害時のリスクが高いと思っていたが、新型コロナウイルスは想定外だ」と話した。

 ただデマ対策とはいえ企業が一方的な判断で投稿を削除することは、表現の自由や知る権利を侵害するリスクもある。東洋大の生貝直人准教授(社会情報学)は、巨大IT企業の取り組みを評価した上で「削除するに当たって透明性を確保し、過度な情報制約を避けなければならない。利用者に丁寧に説明しながら対応を進める必要がある」と述べた。

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