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IOC、五輪延期を決定 来夏の世界陸上は日程変更検討

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国際オリンピック委員会(IOC)は24日、東京五輪を「1年程度延期」すると決めた。バッハ会長は、パンデミック(世界的大流行)が「加速している」とした世界保健機関(WHO)の見解が、延期判断につながったと説明。来年ならウイルス禍の収束が見込める上、夏の陸上世界選手権などが日程変更で譲歩する可能性も高い。北京冬季五輪やサッカーのワールドカップなども重なる2022年より利点は多い。ただ、開催経費の増大など課題も山積する。(ニューヨーク 上塚真由、田中充)

 ロイター通信によると、世界陸連は23日、東京五輪が1年延期となる可能性を見据え、来年8月6~15日に米オレゴン州ユージンで開催予定の世界選手権について、日程変更の検討に入った。すでに協議を進めている同選手権の大会組織委員会も「日程変更の可能性は認識している」との声明を出し、足並みをそろえている。

 水泳も来年夏に福岡市で世界選手権が予定されているが、米国水泳連盟が米国五輪・パラリンピック委員会に五輪開催の1年延期を働き掛けるように要請していることから、日程調整の余地はありそうだ。

 1年後に欧米スポーツが再開した場合、IOCと大型放送権契約を結ぶ米NBCユニバーサルが五輪の視聴率低迷を憂慮し、難色を示す恐れがある。しかし、ウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)によると、広報担当が「われわれが五輪の開催時期をいつでも左右できるとの見方は間違っている」とした上で、「現在は非常時で、前代未聞の状況。東京五輪のシナリオをより良くしようとのIOCの決断を全面的に支持する」と協力姿勢を打ち出す。

 一方で、選手選考は混乱が生じるリスクがある。国内競技団体の幹部は「年内延期なら影響はないが、半年以上の延期なら内定している代表も選び直すことになるだろう」と明かす。その場合、すでに内定を勝ち取った選手がスポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴えるケースも想定される。ある競技の指導者は「1年の延期で代表を選び直さなければ、今度は選ばれていない選手が訴えるだろう」と指摘。どちらにしても、スポーツ界の混乱は避けられない。

 また、五輪会場には首都圏屈指の大型展示場なども含まれ、1年後に確保できるかは不透明だ。ホテルなどの宿泊施設も確保し直さなければならず、時間的に猶予のある2年延期に比べて、ハードルは高い。

 年初の時点で3千人を超える大会組織委員会の職員の人件費など、開催経費の増大も避けられない。膨らんだ費用負担をめぐっては今後、IOCと大会組織委員会、国や都で綱引きが予想される。大会中止を回避し、時期的にもベターな選択に見える「1年延期」も一筋縄ではいかない。

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