経済インサイド

新型コロナでリニア計画見直し懸念 工事の半分中断、JR東海の憂鬱 (1/2ページ)

 新型コロナウイルス感染拡大が、JR東海のリニア中央新幹線の整備計画に影響を及ぼしている。緊急事態宣言の5月31日までの延長が決まり、東海道新幹線の旅客数の回復が先延ばしとなったほか、リニア中央新幹線の工事の半分が一時中断を余儀なくされているからだ。同社は、運輸収入の約9割を占める東海道新幹線の収益力を背景に、リニア新幹線の建設費を全額自社で負担する計画だが、計画の見直しへの懸念が高まっている。

 訪日客頼みが一転

 JR東海が4月27日発表した令和2年3月期連結決算は、売上高が前期比1・8%減の1兆8446億円、最終利益が9・3%減の3978億円の減収減益だった。減収減益となるのは10年ぶり。感染拡大などの影響で2月以降、東海道新幹線や在来線の輸送量が落ち込み、売上高は約750億円減少した。東海道新幹線の旅客収入は、訪日外国人客の増加が牽引しており、新型コロナによる影響が際立つ結果となった。

 4月7日に緊急事態宣言が出てからは、企業の出張や旅行需要がさらに落ち込み、4月1~26日の東海道新幹線の輸送実績は前年同期比11%という厳しい状況だ。

 JR東海は、コスト削減のため新幹線の運行本数を削減するが、「大きな効果は見込めない」(金子慎社長)という。「元々、効率化・低コスト化は経営の中で安全の問題、サービス向上の問題と並び、大変力を入れている」(金子氏)としており、運行本数の削減による費用の削減幅は年間1%程度に止まるとの試算を示した。

 リニア新幹線の整備を含めた設備投資は、計画通り進める方針だ。リニア新幹線に必要な資金は当面、財政投融資を活用した長期借入金で確保できている。

 JR東海の金子氏は「もうかるからやってみようという投資ではなく、安全、サービス向上に資するための投資が圧倒的に多い」と説明。今後については「非常に厳しい情勢なので、いろいろ見ながら判断することになる」と述べた。

 ただ、リニア新幹線の整備計画が順調に進んでいるとは言い難い。

 新型コロナによる影響は、リニア新幹線の工事にも及んでいる。土木工事は、約40カ所のうち約半数の工区で中断している。休工はゴールデンウイーク(GW)明けまでをめどとしており、再開の時期は工事を請け負う事業者が今後の情勢を踏まえて判断するというが、緊急事態宣言の延長は再開に逆風となっている。

 さらに、南アルプスを貫通するトンネル工事を控える静岡工区については、静岡県との間で環境対策をめぐって対立し、いまだ着工していない。国土交通省が間に入り、有識者会議が発足したが、早期の問題解決には至っていない。

 リニア整備計画は、東海道新幹線の経年劣化や大規模災害に備え、日本の大動脈の東京-大阪間のバイパス機能を確保する目的がある。東京・品川-大阪間をつなぐリニア新幹線の総工事費は9兆300億円に上る。令和9年に品川-名古屋を先行開業、19年に大阪まで延伸する計画だ。東海道新幹線と合わせて一体的な経営を実践することで財務体力を維持、回復しながら建設費を自己負担して進める方針だ。

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