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「仮面ライダーを救い、コロナ危機を乗り越えよ」 東映ハイテク大使館の挑戦 (1/2ページ)

波溝康三

 多様化、複雑化する社会において、企業にも大変革のイノベーションが求められる中、大手映画会社の東映に新設された部署が話題を呼んでいる。部署の名前は「ハイテク大使館」。目的は、その名の通り、東映グループ内における大使館として、先端技術を駆使し新規プロジェクトを遂行するために各部署の“垣根=国境”を越えて橋渡しの役目を担うこと。現在、計画中のいくつかのプロジェクトを聞くと、仮面ライダー救済やコロナ対策など驚くべき内容のミッションだった。

 東映太秦映画村や撮影所、映画館、ホテル…。東映のグループ各事業は、それぞれ個別に運営されてきた。

 「縦割りだった組織間の風通しを良くしながら、それぞれの事業が抱える課題を横断的に解決したり、新規事業を立案したりする部署が、これまで東映にはありませんでした。縦割りの組織を横にくし刺しするような部署が求められていた。そこで“大使館のような組織”を作れという特命が下されたのです」

 2018年6月、東映グループのトップ、岡田裕介会長からの特命で新組織「ハイテク大使館」が発足。新部署の長に抜擢された白倉伸一郎・特命全権大使(取締役)は、ハイテク大使館発足の経緯についてこう説明する。

 それにしても部署名は奇抜でユニークだ。

 最先端の技術(ハイ・テクノロジー)を使いながら問題解決していく大使館のような組織を目指す…。こんな意図は分かるのだが、これまで、どこの企業でも聞いたことがない。なぜ、ハイテク大使館というネーミングに決まったのか?

 「現在では、ハイテクという言葉はもはや死語になっているでしょう。誰も使わない。だから、あえてハイテク大使館というアナログな名前にすることで、逆に社内外の人たちが興味を持ってくれるんですよ」

 名称を考案した白倉さんは笑いながら、こう説明する。

 名刺に刷られたインパクトあるネーミングの肩書は、分かり難い新部署の目的を社内外に浸透させるのに、効果絶大だったという。

 仮面ライダーを“冷やせ”

 「東映のグループ事業が、それぞれ個別に持っている新技術を、個々で使うのではなく、グループ間で横断的に導入し、運用できないか?」

 その1つが電子決済だった。

 「例えば観光客に人気の東映太秦映画村やグループ企業のホテル、映画館などを電子決済で1つに結び付けられたら、利用者にとっても便利ですし、東映側にとっても顧客情報が一元管理でき、グループで情報が共有できる。現在、大使館員が、それぞれグループ事業と連携を取りあうために動いています」と白倉さんは説明する。 

 さらに、現在、ハイテク大使館が進めている東映ならではのある新規プロジェクトを教えてくれた。

 「これまで地球を救ってくれた仮面ライダーを、今度は我々が救おうというプロジェクトです」

 特撮ヒーローものの人気キャラクター、仮面ライダーは、東映グループにとって欠かすことのできない重要なキャラクターだ。映画、テレビ、ヒーローショーなど運営部署が複数のグループ事業にまたがるビジネス的にも貴重なキャラクターでもある。

 そんな偉大なヒーローを長年、苦しませてきたことがある。ハイテク大使館は、この悩みに着目した。

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