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観光・宿泊 積極姿勢が裏目 訪日客数、歴史的な悪化 回復は来年

 訪日客数が歴史的な水準に悪化した。観光・宿泊業界は経営破綻が続出、訪日客を取り込もうとホテル建設などを積極的に進めた姿勢が裏目に出た面もある。海外旅行の需要が回復し始めるのは2021年との見方が強く、長期戦を見据え、他業種参入で生き残りを目指す動きもある。

 昨年と状況一変

 城下町の風情漂う岐阜県高山市。中心部の人影はまばらだ。4月半ばから臨時休業している土産物店の女性(50)は「どの店も休んでいる。こんな光景見たことない」とため息交じり。観光客に人気の「宮川朝市」を運営する協同組合の担当者は「廃業を考える出店者もいる」と明かす。

 市の訪日客は昨年、過去最高の61万人を記録。ホテル開業ラッシュに沸いていたが、新型コロナで状況は一変。老舗旅館が倒産し、一部ホテルは開業計画が白紙になった。

 東京商工リサーチによると、新型コロナの影響による宿泊業者の倒産は全国で31件(5月19日時点)。ホテル開設で調達した資金の金利負担がのしかかったケースもあり、同社は「東京五輪・パラリンピックを狙った先行投資の負担と業績悪化が重なった業者が増えている」と分析する。

 訪日客増加を背景に客室の新規供給が拡大していた局面で需要が急減した事情もあり、反動は大きい。京都簡易宿所連盟(京都市)が加盟する経営者80人に調査した結果、4月22日時点で75%が休業。半数以上が廃業か、賃貸など他業態への変更を検討していた。

 京都市のゲストハウス「和楽庵」は客室をテレワーク用に提供しているが、今月の稼働率はこれまで5%。経営するルバキュエール裕紀さん(42)は「元々、7割が外国人客。終わりのない夜を迎えたかのようだ」と肩を落とす。

 国連世界観光機関は、旅行制限の動きが(1)7月上旬(2)9月上旬(3)12月上旬-に緩和されるという3つのシナリオを想定。12月上旬なら今年の海外旅行者数は前年から78%減り、損失額は1兆2000億ドル(約129兆円)に上ると推計している。

 海外旅行の需要が持ち直し始めるのは21年と予想する専門家が多いとのデータも示し「世界は前例のない経済危機に直面し、雇用が危険にさらされている」と警鐘を鳴らす。

 他業種に参入

 逆境を本業以外でしのごうとする会社もある。外国人向けのツアー予約や情報サービスを展開するベンチャー企業「ワメイジング」(東京都港区)は、4月の取扱高が1月と比べ98%減少。雇用を維持するため、外国籍の社員が多いという強みを生かし、中国語や英語の翻訳サービスを始めた。

 加藤史子社長は「いずれ外国人客は必ず戻る。それまで会社の収益を確保することが重要だ」と強調する。

 外国人実習生が来日できず、人手不足が深刻になっている農業と連携する取り組みも。長野県軽井沢町では旅館組合と農協が協力し、仕事の少なくなった旅館の従業員たちが農家でレタスの収穫、キャベツの植え付けを手伝っている。

 軽井沢旅館組合の鈴木健夫組合長は「客がほぼゼロの宿泊施設にとって、人材を生かしながら収入を得られるのはありがたい」と説明。これを機に、感染収束後は農家と連携した観光ツアーを検討するという。

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