サービス

コロナ禍で苦悩するローカルテレビ局 「報ステ」と同じ対応は困難

 【テレビのミライ】メディアコンサルタント・境治氏に聞く

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各テレビ局では、ドラマとバラエティー番組の収録がほとんどできなくなっている。在京のキー局だけでなく、ローカル局も同様だ。地方独自のバラエティーなどを作っていたが、現在、自社制作はニュースや情報番組にほぼ絞っている。福岡県のRKB毎日放送では、出演者が感染し、月曜から金曜まで平日午後に放送していた情報番組「今日感テレビ」が放送休止となった。

 キー局の場合、例えばテレビ朝日の「報道ステーション」で富川悠太キャスターの感染が判明した後も、別のアナウンサーやスタッフを入れてやり繰りをしている。だが、ローカル局で同じ対応は難しいだろう。

 私が発行する有料マガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」で、放送業界に勤める人にアンケートを行った。ローカル局の社員の回答を見ると、2班態勢を取り、1つの班から感染者が出ても放送を続けられるよう、リスクヘッジを始めた局も出てきている。

 感染拡大直撃、営業面厳しく

 営業的にも非常に厳しくなっている。番組と番組の間に流すスポット広告の出稿がもともと大きく減少傾向にある中、新型コロナウイルス感染拡大で厳しさに拍車がかかっている。

 NHKが4月から、テレビ番組のインターネットへの同時配信と見逃し配信サービスを本格的に始めたが、民放が追随するのは遅れざるを得ないだろう。同時配信は各局にとって、費用はかかる一方で、収入はすぐにプラスにならない。新型コロナウイルス感染拡大に伴って経営状態の悪化が予想されるため、それどころではなくなるだろう。

 ただ、通常の放送が難しくなってきている中で、機動性のあるインターネットの活用は進みつつあるようだ。アンケートでは、ツイッターで自治体が行う記者会見を配信することで、局の公式アカウントのフォロワー(登録読者)数が増えたローカル局もあった。

 最近のスポット広告激減を受け、ローカル局では、エリア内での系列を超えた合併や、エリアをまたいだ系列局の統合という「再編」に関する議論も一部で始まっていた。各局の経営を直撃する新型コロナウイルスは、再編の時間軸を早める可能性がある。キー局にとっても系列のネットワークをどうするのか、早急に考える必要が出てくるのではないか。

 広告費でネットに抜かれた今、テレビ各局はネットで、どんなビジネスモデルを作ることができるのかを考えないといけない。民放キー局はそれぞれ個別に有料動画配信サービスを提供しているが、米ネットフリックスやアマゾンに対抗するためには、まとまる必要がある。無料見逃し番組配信サービスとして全キー局で運営する「TVer(ティーバー)」があるが、これと同じような共通の有料サービスについて早急に考えるべきだろう。

 ネット広告モデルの構築必要

 それとは別に、テレビ局が絶対にやらなければいけないのは、ネット上での広告ビジネスモデルの構築だ。例えば、現在はお知らせ的な内容にとどまっている番組サイトを活用するなどして、スポンサーに「これだったら広告をやりたい」と言ってもらえるような、新しい企画を提案することが必要になってくる。

 ローカル局にとっては、放送を通じて地域の人たちとの共生感をもっと深く打ち出すことが求められてくる。スポンサーは、単にキー局でCMを流せばいいとは思っていない。各エリアで、どの局のどの番組にどうCMを出せば効果的なのかを懸命に模索している。「うちの局はこういう人たち(視聴者)をよく知っている」とそれぞれのローカル局がスポンサーに言えるようになるべきだ。

 それぞれのエリアでどういう視聴者と接しているのかをしっかり言えるような番組制作を行える局が、今後生き残っていくことになるだろう。(聞き手・森本昌彦)

【プロフィル】境治(さかい・おさむ) 昭和37年、福岡市生まれ。東大卒業後、広告代理店でコピーライターとして勤務し、平成5年にフリーに。その後、映像制作会社を経て独立。メディアコンサルタントとして活動する。著書に「爆発的ヒットは“想い”から生まれる」など。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus