論風

重要度増す1次産業 危機回避へ一極集中是正を (1/2ページ)

 ナチュラルアートCEO・鈴木誠

 コロナショックは、100年に一度といわれる、深刻な社会的かつ経済的混乱を生じさせた。農業をはじめ、1次産業やその関連産業にも、極めて大きな影響を及ぼしている。外食産業や給食事業の苦境は、とても看過できない状況にある。行動自粛のため、スーパーや宅配・持ち帰りの売り上げは伸びているが、食産業全体の市場規模は縮小し、農作物など1次産品の売り上げも減少し、農家も漁師も大変だ。

 行政による販売ロス農作物などの買い上げ補償など、一部の対策も実施されてはいるが、これらは部分的かつ短期的なつなぎが主であり、長期的に業界を支えることは難しい。残念ながら、このような難局は中長期的にも続くであろう。かつてとは異なる、行動の自粛や制限は、もはや社会の中での前提条件として認めざるを得ない。

 しかし、悲観論を言っている場合ではない。コロナショックによって社会・産業構造の見直しを余儀なくされることになった。英知を結集し、災い転じて福となすことができるかどうか、われわれ自身の真価が問われている。

 食料パニック起きず

 コロナショックにより、1次産業及び流通・物流・加工など関連産業の社会的重要性は再認識された。それら産業は、自らウイルス感染リスクを負いながら、社会インフラとして公的機能を維持し、これまで以上の社会的責任を果たしてきた。これほど難しい局面においても、日本で食料パニックが発生せず、消費者の食生活基盤が安定しているのは、食産業に携わる方々の献身的な努力にほかならない。

 とはいえ、コロナショック以前から、それら産業は構造的な問題を抱えており、構造改革が喫緊の課題となっていた。1次産業就労者数や生産量は年々減少し、流通業者は過当競争が繰り返され、物流業者はドライバー不足や環境問題を抱えるなど、多くの構造的課題がある。今こそ、創造的破壊を進めるための待ったなしの機会だ。

 日本にとって、食のインフラは当たり前で、あたかも盤石であるかのように思われていたかもしれない。この1~2年、事実上、輸入食品が拡大していることで、消費者は特段の危機感を覚えていなかったかもしれない。

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