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「大規模な仮設展示場を」 中小572社が東京都に要望

 東京五輪・パラリンピックの開催延期で、東京ビッグサイト(東京都江東区)の東展示場が来秋まで使えないことで、中小企業経営者が頭を抱えている。展示場で開催される各種産業見本市に出品できず、商談の機会が奪われるためだ。見本市運営会社と国内外の中小企業572社が連名で東京都に対し、大規模な仮設展示場を求める嘆願書を提出したが、実現の可能性は低い。コロナ禍で苦境に立つ中小企業にとっては厳しい経営環境に追い込まれている。

 東京ビッグサイトで開かれる各種見本市は年間約300本。国内外から毎年1400万人前後が来場するため、人手が足りない中小企業にとっては格好の商談の場だ。年に数回、東京ビッグサイトでの見本市に出展する金型製作を手がけるミヨシ(同葛飾区)の杉山耕治社長は「実際に金型を見てもらうことで、新たな契約が取れることも多い。ビッグサイトで展示できないのは営業面でつらい」と話す。

 東京ビッグサイトは東京五輪・パラリンピック期間中、メディアセンターとして使われることが決まっている。開催延期となったが、すでに内装工事が終わり、放送機材の撤去や再設置が間に合わないとして、東展示場は大会終了後の令和3年秋まで使えなくなっている。

 見本市に出展する中小企業だけでなく、設備工事、警備、供食、人材派遣など見本市の開催の裏方として活躍する企業も数多く存在する。日本展示会協会によると、五輪延期に伴う機会損失額は1兆5千億円。さらに当初の大会日程に伴う東京ビッグサイトの利用制限に関する分も含めると4兆円に達する。

 そこで見本市運営大手のリードエグジビションジャパン(同新宿区)は国内外の中小企業572社との連名で、東京ビッグサイトのすぐ近くに仮設の大型展示場の建設を求める嘆願書を東京都に提出した。リードの石積忠夫名誉会長は「多くの中小企業が今秋の東京ビッグサイトでの見本市への出品を目指して耐えてきた。このままでは倒産するところが出てくる」と話す。ただ仮設展示場の建設には用地の確保などの問題があり、実現の可能性は極めて低い。

 平成24年のロンドン、28年のリオデジャネイロ五輪・パラリンピックでは、大会期間中でも多くの産業見本市が開かれていた。石積名誉会長は「産業見本市は日本の先端技術やサービスを外国人に知ってもらう場でもある。五輪に限らず大規模なスポーツイベントの誘致が今後もあるだろう。この問題を教訓としてほしい」と語った。

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