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ホテル開業ラッシュの奈良 インバウンド頼みから国内需要に照準 (1/2ページ)

 多くの世界遺産に恵まれ、ここ近年は訪日外国人客(インバウンド)が増加していた奈良では、インバウンド需要を見込んだホテルの開業やリニューアルが今年、相次いでいる。ところが、新型コロナウイルス感染拡大は、思い描いた成長戦略に大きな影を落とした。ホテルや観光客誘致に力を入れてきた自治体は、地元客や国内旅行者の需要を掘り起こす戦略で、難局を乗り越えようとしている。(桑島浩任)

 県民需要を掘り起こし

 興福寺から徒歩数分の好立地にある「ホテル尾花」(奈良市高畑町)は、5月まで「ホテルサンルート奈良」として親しまれたが、6月、昭和55年に閉館した前身の映画館「尾花劇場」の名前を復活させ、一部リニューアルを行った。

 平日の昼間にロビーをのぞくと、友人と談笑したり、のんびりと読書にふけったりしている年配の男女の姿が目立つ。多くは奈良市在住の地元住民という。

 同ホテルは6月から、県民限定に「顔見世プラン」を始めた。シングル朝食付きで1泊4千円という破格の料金。新型コロナ下であえてもうけを度外視した新プランだ。中野聖子社長は「どうせ商売にならないなら、普段はできないことをやろうと考えた」と話す。

 これまでの宿泊客は県外からが中心。外国人は2割程度ながら、「インバウンドはまだまだ伸びるということで、県内のホテル全体が外国人向けにシフトする流れだった」と明かす。

 ところが、新型コロナで状況は一変。そこで国内に目を向け、県民需要を掘り起こそうと考えたわけだ。「ホテルで過ごすだけの非日常を楽しんでもらう。新しい価値を提示していかないといけない」。顔見世プランは10月末まで継続する予定で、会議室の大スクリーンで映画観賞が楽しめるプランも検討している。

 インバウンド需要消滅

 奈良県を訪れた外国人観光客数はここ数年で目覚ましい伸びを見せた。県の推計によると、平成24年はわずか28万5千人だったが30年には258万2千人となり、6年で9倍以上に急増した。宿泊者数も24年の10万4300人から令和元年の46万830人と約4・4倍に増加した。

 この「インバウンドバブル」をあてこんで、今年、奈良市ではダイワロイヤルホテルの「D-PREMIUM奈良」が3月にオープン。6月には奈良公園内に隈研吾氏がデザインした高級リゾートホテル「ふふ奈良」も開業した。7月22日には米高級ホテル「JWマリオット・ホテル奈良」(いずれも奈良市)もオープンする予定だ。

 しかし、新型コロナの感染拡大でインバウンド需要は消滅。訪日外国人客数は4月が2900人、5月は1700人で、ともに前年同月比99・9%減という記録的な下落となっている。

 創業111年の伝統を誇り、古都の迎賓館と呼ばれる「奈良ホテル」(同)も平成29年に始めた約3年に及ぶ耐震補強工事が今春、完了したばかり。いよいよ本格稼働という矢先のコロナ禍に、藤田昌宏営業企画課長は「これまでの常識とは異なるコロナ時代の新たなホテルサービスが必要になる」と話す。

 フロントのスタッフがアクリル板ごしにルームキーをトレイに載せて宿泊客に差し出し、館内のサービス案内が記載された紙を渡す。要望があれば客室への案内すら控える。老舗ホテルの手厚いサービスのイメージとは異なるが、いずれも感染に不安を感じる宿泊客への配慮という。

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