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楽天携帯でトラブル頻発 5Gサービス開始延期、周波数無断変更

 楽天が4月に本格参入した携帯電話事業でトラブルが止まらない。第5世代(5G)移動システムを使ったサービスの開始時期を延期したのに続き、独自開発のスマートフォンの周波数を無断で変更したことが判明し、行政処分を受ける可能性がある。三木谷浩史会長兼社長は、世界の通信会社に革新的な通信システムを提供する「プラットフォーマー」となる野望を抱くが、理想と現実の大きな隔たりに直面している。

 野望と現実の隔たり

 「日本品質のプラットフォーム(基盤)を世界の新たなスタンダード(標準)にしたい」

 三木谷氏は6月3日、NECの新野隆社長らとともに臨んだ5Gシステムの共同開発の会見で高らかに語った。楽天は携帯事業でクラウドを使った「仮想化」と呼ぶ技術を世界で初めて通信網に全面採用。来年からこのシステムを海外の通信会社などに販売するビジネスモデルを打ち出した。

 念願のプラットフォーマーとしての第一歩を踏み出したはずの三木谷氏-。だが、直後に大きな落とし穴が待ち構えていた。楽天が独自開発したスマートフォン「楽天ミニ」を国の技術的な認証に適合していない状態で販売していた疑いが浮上し、6月12日に総務省から報告を求められた。

 楽天ミニは名刺サイズのコンパクトさと1万7000円(税別)の低価格が特長の戦略商品だ。期間限定で行った実質1円で販売するキャンペーンなどが奏功し、契約者拡大に貢献していただけに、法令違反で厳しい処分が下されれば、事業への打撃になりかねない。

 楽天によると、5月以降に発売した端末で海外に渡航した際の利便性を高めるために欧米で使われる周波数を利用できるよう追加した一方、自社の通信網で利用しない周波数への対応をやめたのだという。「端末が対応できる周波数に限りがある」(担当者)ため、周波数を入れ替えた。

 問題は正式な手続きを経ずに変更していた点だ。端末は通信の品質を確保するため、製品化の際に認証機関から日本の通信規格に適合していることを証明する認証の取得を義務付けられている。端末の設計を変更する場合は認証を取り直す手続きが必要だが、これを怠っていた。

 楽天は「認証機関など外部に確認したら(変更手続きは)不要という回答だった」と弁明し、認識の浅さを原因に挙げた。現在までに変更で必要になる認証はすでに取得しており、今後はソフトウエアの更新によって正しい認証番号を表示する。端末の交換受け付けや内部管理体制の強化などの対策も講じる方針だ。

 楽天は6月26日に総務省にこうした事実関係に加え、新たな問題も報告した。1月以降に販売した端末に認証番号が誤って表示されていたことが判明したのだ。いずれのケースも「認証とスペックが違う端末を販売していたことになる」と総務省の認証関係の担当者は問題視している。

 トラブルを頻発させる楽天の姿に、楽天をバックアップしてきた総務省の幹部も最近は眉をひそめる。大手3社で寡占状態の国内の携帯市場での値下げ競争を期待して後押しする姿勢だが、問題が続けばさすがにかばいきれなくなる。中でも「決して小さな事故ではない」と幹部が指摘するのは、5月に電波がつながりにくくなる通信障害を長時間起こしたことだ。

 手本なき「世界初」

 三木谷氏はサービス開始前に「(『重大事故』と判断された一昨年末の)ソフトバンクのような通信障害は起きない」と豪語していたが、早くも齟齬(そご)が生じた。それにもかかわらず6月の会見では「(開始から)2カ月たって通信網は安定している」と強がった。

 事業計画の遅延も相次ぐ。携帯の本格サービス開始は、基地局整備の遅れで計画から半年遅れの今年4月となり、5Gのサービス開始も6月から9月に延期された。5Gに限っては新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、楽天の過失によるものではないようだが、公約破りが続くと消費者の信頼を失いかねない。

 楽天社内でも混乱を象徴する出来事があった。本格参入直前の3月、楽天モバイルの幹部2人が相次いで退職したのだ。副社長だった徳永順二氏は元ソフトバンクの渉外担当で昨年8月に招聘(しょうへい)したばかり。常務だった大尾嘉宏人氏は長年、格安スマホ事業を牽引(けんいん)してきた存在だった。三木谷氏と方向性をめぐる対立があったとみられている。

 確かに、楽天が全面採用する仮想化技術は、クラウドを利用することで通信網の初期投資や運用費を3~4割削減できる画期的なものだ。各国で5Gが本格化する中、三木谷氏は海外に売り込む青写真を描く。

 だが、問題が相次ぐのは、ゼロからのスタートでノウハウが不足していることに加え「今までにない技術を使っている難しさがあるためだ」と関係者は語る。世界初の技術なだけに有事の際の手本がなく、通信品質の検証などには時間がかかる。携帯事業に精通した人材も不足している。

 こうした現場の実態と、三木谷氏の経営スピードとの間にギャップが生じており、ひずみになっている可能性がある。

 三木谷氏は海外展開を見据え、「(国内)携帯事業の損益分岐点となる700万人の契約獲得に早く到達する」と語る。だが、楽天にとって喫緊の課題は国内における足場固めだ。自前の通信網があってデータが使い放題のサービスエリアは、東京23区などに限定されている。基地局の整備を急いで全国に通信網を拡大するとともにサービスの品質を盤石にしなければならない。国内で実績を積み上げなければ、海外展開は絵に描いた餅となる。(万福博之)

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