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「コロナに負けた。今日で閉店です」 サポート届かぬ現場の人々

 【現場から】

 「コロナに負けました。今日で閉店です」 東京都台東区と荒川区にまたがる商店街「谷中銀座」で、洋服店を6年間営んできた店主の男性(72)は、力なく話した。新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の解除から約1カ月が過ぎた6月27日。食べ歩きや、総菜を買い求める客の行列が見られ、商店街がにぎわいを取り戻しつつあるにもかかわらずだ。

 がらんとした店内で黙々と片づけをする老夫婦。男性によると、通りを歩く人は増えたが、店に客が入ってこないという。人々の消費行動は元に戻ってはいない。1人10万円の国の特別定額給付金は申請したがまだ入金されず、事業主を救済する「持続化給付金」については「これはだめだ、この書類が必要だと言われ、理解できないからあきらめるしかなかった。泣き寝入りです」。

 同じ谷中銀座の喫茶店「カフェ ア・ラ・パパ」(荒川区西日暮里)を営む小川宏さん(72)は、売り上げが落ちて店の維持費に悩まされていたが、持続化給付金の申請が通り、支給された。「一緒に働く娘や青色申告会の助けを借りて申請を出すことができた。自分一人では難しかったと思う」と振り返る。

 高い家賃が負担に

 4月7日に緊急事態宣言が発令された都内では、営業の自粛要請によって商店街の売り上げが激減。家賃をはじめとする維持費が重くのしかかる。感染拡大を防ぐ3密(密閉、密集、密接)の対策にも追われている。

 「吉祥寺サンロード商店街」(武蔵野市)は吉祥寺駅前にあるアーケード型の商店街だ。振興組合事務局長の水野健造さんによると、商店街に人が密集しているとメディアに取り上げられたことで、苦情の声が1日10件以上寄せられたこともあった。

 「『外出自粛しろといっているのに全然減っていないじゃないか』『何で止めないのか』とお叱りの声があった。報道で密に見えるような写真の撮り方をされ、怒りを買ってしまった面もある」

 金曜日の夕方に取材してみると、アーケードを通る人は谷中銀座と比べて足早で、商店にわき目もふらずに過ぎていく人も多い。商店街の会員は161店舗だが、7店舗の閉店が決まり、うち6店舗がコロナの影響による閉店だという。水野さんは「ここは地価に比例して家賃が高く、コロナで売り上げが減り、高い家賃が負担になっている。多少体力があってももたない」とし、持続化給付金の早期支給などを訴えた。

 給付金申請相談を

 商店街といえば、閉店店舗が目立つ「シャッター街」が問題化して久しいが、都産業労働局の昨年度調査(回答率7割)によると、11以上の空き店舗があるのは都内の商店街の約3%で、決して多くはない。しかし店主の高齢化や後継者不足の問題は都内でも存在し、コロナによる苦境が拍車をかける恐れはある。

 経済ジャーナリストの小倉正男さんは「商店街は高齢者や子供など地元の人たちにとっても重要な存在だ。持続化していくためにも給付金などを活用して乗り切ってほしい。申請についても一人で抱え込まず、周囲や全国にある『申請サポート会場』で相談してほしい」と話す。

 だが、先の洋服店の店主は「これからどう食べていけばいいのか。給付金は本当に困っている人を優先にやってほしい」とため息をつく。サポートの手が届いていない人々は、確かにいる。(本江希望)

 都知事選が繰り広げられる都内で、「現場」の声に記者が耳を傾けてみた。

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