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アラビアのりに蜂蜜、赤いパインアメ コラボグッズ連発の秘訣 (1/2ページ)

 【一聞百見】ヘソプロダクション代表取締役・稲本ミノル氏に聞く

 菓子や文具などの定番商品を雑貨・土産物にアレンジするヘソプロダクション(大阪市福島区)。しゃれっ気たっぷりの商品は、手に取ると笑ってしまい誰かに教えたくなる魅力がある。他企業とのコラボレーションで企画を連発する代表取締役、稲本ミノルさん(44)は「日本の『いいものづくり』をアピールしていきたい」と話す。(聞き手・粂博之)

 定番商品をおもしろくアレンジ

 どうぶつのり(大阪府八尾市の不易糊工業)の容器にパインアメ(大阪市天王寺区のパイン)、「?」マークのマジックインキ(同市旭区の寺西化学工業)のキャップを取ると中からご飯のふりかけ…。「定番商品をいかに面白くみせるか」にこだわったヘソプロダクションの商品。企画することは「お笑い芸の大喜利みたいなもの」と稲本さんは言う。

 平成26年にスタートした同社を一躍有名にしたのは29年6月発売の「忖度(そんたく)まんじゅう」。政府の意思決定で安倍晋三首相に対する忖度が働いていることが明らかになったころ、取引先の「何かでけへんの(できないの)」の一言をきっかけに企画した。他社とのコラボではなくオリジナルだ。大喜利でいえばお題は「忖度」。癒着や公私混同に通じるとの否定的な文脈で語られていたが「本来は悪い意味ではない。『人の心を推し量る』という気遣いで、ビジネスのツールでもある」。そこでビジネスマンの手土産になる、まんじゅうに決めた。最もこだわったのはパッケージデザインで、ユーモア、まじめさのさじ加減が肝だった。

 「これはイケる」と踏んだのだが、小売店に提案すると「面白いけど、上には通らない」「政治が関係するものは…」と歯切れの悪い反応。忖度という「変な壁」に阻まれた。しかし、あきらめず売り込みを続け、少しずつ棚に並ぶようになった夏、一部の新聞、ネットニュースに取り上げられると火が付き、製造が追いつかないほど注文が殺到した。

 「今年の流行語大賞は俺か、とか冗談を飛ばしていた」ら、11月に本当に新語・流行語大賞の事務局から受賞の知らせが届いた。「ネガティブにみられがちな言葉の本来の意味を、関西人らしくユーモアをもって広めた」と評価された。この年の大賞は「忖度」と「インスタ映え」。東京での授賞式で周囲の反応は「この人誰? なんでこの人が? っていう感じでしたけどね。まんじゅう屋の2代目と勘違いされたり」。

 その後、忖度まんじゅうは首相主催の「桜を見る会」を連想させる「桜」や、「お茶を濁す」にかけた「茶」なども出してシリーズ化、累計50万個以上を売り上げた。ただヒット作は時に呪縛となる。「忖度超え」が課題になった。

 メモは取らない

 常に「面白いこと」を考えているという。企画した「忖度まんじゅう」は平成29年の流行語大賞に選ばれるなど大ヒット商品となった。だが、そのイメージだけが定着することは避けたかった。だから年間千件超の商品や店舗の企画、プロデュースを目標に掲げ、実行してきた。ペースは衰えない。今年に入っても「大阪迷菓 注釈まんじゅう」「大阪限定ご当地菜箸 大阪心さいばし」「大阪限定 モンチッチたこ焼き(ぬいぐるみ)」「広島限定 真っ赤なパインアメ」など20アイテム以上を発表。さらに裏方として多くの企業の企画に携わっている。依頼は多いが、待っているばかりでもない。5月に発表した「はちみつアラビックリ!?ヤマト」は、液状のりの定番商品「アラビックヤマト」の容器に蜂蜜を入れたもので、稲本さんから製造販売元のヤマト(東京)に持ちかけた。

 アラビックヤマトを手に持ったとき「紙にのりを塗るのも、パンに蜂蜜を塗るのも動きは同じではないか」と思ったのがきっかけだ。企画書を送り、文具の展示会でヤマトの社長と会った際に説明すると「面白い」。話は決まった。「面白い」とひらめいても大体は「ほかに3人くらいが同じことを考えている」ものだと思っている。「じゃあ、誰が形にするのか。最後は行動力で決まる。それがものづくりで大事なこと」

 蜂蜜を液状のりの容器に入れるとなると、衛生管理などで手間とリスクが生じる。商品化に疑問を投げかける声も聞こえてくるが、問題を一つずつクリアしていった。ネットで予約を受け付けると千個が3分で完売。生産に応じて千個単位で予約販売しているが、そのたびに即完売している。発案から商品化まで1年かかったが、当然、この商品にかかりきりだったわけではない。「同時に100個くらいの企画を進行させている」

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