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SNS 災害対策に活用 AIで状況把握、救助や避難情報提供

 災害現場から会員制交流サイト(SNS)に投稿される情報を分析し、自治体による被災状況の把握や救助活動に役立てる試みが進んでいる。NECはツイッター情報から人工知能(AI)が被災場所を地図に表示するシステムを開発。政府もLINE(ライン)による避難情報の提供を検討する。大きな災害が相次いでおり、本格的な導入が急がれている。

 現場伝える投稿

 「もうすぐ川が氾濫します。絶対に近づかないで」「町中が水没」「逃げて」。九州を中心に甚大な被害をもたらした今回の記録的な豪雨でも、ツイッター上には濁流の映像とともに、現場の状況を伝える多くの投稿があふれた。

 災害時などに投稿されるこうした大量のツイッター情報を災害対策に活用するため、NECはAIが必要な情報だけを抽出し、可視化するシステムを開発した。「河川の氾濫」「冠水・浸水」「インフラ被害」などに分類して整理し、自治体別に何件の投稿があるかも一目で把握できる。被災現場を地図に表示し、救助を待っている人の場所や必要な救援物資も分かるという。

 ただSNSにはデマや不正確な情報もあるため、必要なものだけを人間が判断して取得することが難しい。このためAIが同じ時間、同じ地域で投稿された別の投稿と比較し、矛盾している可能性がある投稿を自動で検知し画面に表示する。

 昨年10月の台風19号の際、長野県ではツイッターに投稿された救助要請が50件以上の救助につながった。NECの担当者は「自然災害や大規模事故の発生直後は、行政やメディアから発信される情報は限定されている。SNSでいち早く状況把握が可能になる」と指摘する。複数の自治体が近くNECのシステムを導入する見通しだ。

 問い合わせ自動対応

 一方、ラインは気象情報会社ウェザーニューズ(千葉市)と共同で、災害時にAIが住民からの問い合わせに自動で応対してくれるアプリ「AIチャットボット」を開発、運用している。利用者が質問を入力すると、気象情報や避難所の場所、物資の確保など災害復旧や生活再建に必要な情報を会話形式で24時間いつでも教えてくれる。

 内閣府は6月、防災に最新テクノロジーを活用するための方策を取りまとめた。AIやSNSを使って国民一人一人に的確な避難情報を提供するシステム開発を目指す。災害で通信手段が途絶した場合に、人工衛星やドローンを経由し安否情報や危機管理情報を伝達するサービスも推進する方針だ。

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