リーダーの視点 鶴田東洋彦が聞く

クリーク・アンド・リバー社 井川幸広社長(2-1)

 知恵×知恵 プロをネットワーク

 プロフェッショナル人材の派遣・請負事業などを展開するクリーク・アンド・リバー(C&R)社は創業から第30期に当たる2020年2月期を過去最高の業績で終えた。約30万人の専門家をネットワーク化する“知的財産商社”として、映像やゲームなど17分野に事業領域を拡大・深化してきたことが寄与した。創業者の井川幸広社長は「専門家の知恵という営業資産を強くしてきた。今後は知恵と知恵を組み合わせることで新しいビジネスを創る」と強調。「変革のときこそ好機」と位置付け、新型コロナウイルス感染症の収束後を見据え第2フェーズに突入する。

 コロナで底堅い需要

 --20年2月期は好調だった

 「売上高(329億4600万円、前期比11.4%増)、営業利益(20億8300万円、32.0%増)とも過去最高だった。クリエイター、医師、ITエンジニア、弁護士、研究者、建築士、シェフなど専門家へのニーズは旺盛で事業が堅調に推移した。映像やゲームなどクリエーティブ分野ではエージェンシー(派遣・紹介)、プロデュース(請負)、ライツマネジメント(知財流通)という事業の3本柱がそれぞれ伸長した上、医療分野、会計・法曹分野などでも着実に事業基盤が拡大した」

 --新型コロナの影響を受ける今期の見通しは

 「コロナ感染から社員を守るため、当社社員もクライアント(顧客企業)もリモートワークを推進しており、以前の働き方に全てが戻ることはない。このため、苦戦するビジネスと伸長するビジネスが出てくる。ゲームや電子書籍は外出自粛による在宅時間の増加で伸びている。また、今後は『3密』回避によりオンラインイベントへのシフトが進む。一方で請負の受託や新規契約、派遣の新規稼働は選考プロセスの遅延などにより進捗(しんちょく)が遅れている」

 「第1四半期(3~5月期)は外出自粛、休業要請の本格化など厳しい状況の中、代えの利かない専門能力を持つプロに対するニーズが底堅く推移し、四半期として過去最高の業績を残せた。通期でも売上高400億円、営業利益26億円と、11年連続の増収増益と過去最高の業績を見込む」

 --プロのクリエイターを顧客企業に派遣・紹介する「プロフェッショナル・エージェンシー」として確固たる地位を築いたといえる

 「映像やゲーム、ウェブ、広告・出版などクリエーティブ領域で、クリエイターとクライアントをつないで、仕事を供給していく『クリエイター・エージェンシー』というビジネスでスタート。今ではクリエイターにとどまらず、幅広くプロをネットワーク化し、医療、法曹、会計、建築、ファッション、食、ライフサイエンスなど17分野に事業領域を広げた」

 「約30万人(このうちクリエイターは8万5000人)を約3万5000のクライアントに紹介しているが、われわれはプロの人材ビジネスを手掛けているという感覚は持っていない。クライアントがプロの能力を生かすことで新たな事業展開や価値創造につながればいい」

 第2フェーズ入り

 --このネットワークをどう生かしていくのか

 「われわれの経営理念は『人の能力は、無限の可能性を秘めています。私たちはその能力を最大限に生かし、人と社会の幸せのために貢献します』というもの。そのためのミッションとして『プロフェッショナルの生涯価値の向上』『クライアントの価値創造への貢献』を掲げている。ヒト、モノ、カネの経営資源のうち最大ウエートのヒトで約30万人をネットワーク化し、この能力を生かすためエージェンシー、プロデュース、ライツマネジメントの3本柱に投入してきた」

 「このようにプロが力を発揮できる環境づくりを第1フェーズと位置付けると、創業30年で第2フェーズに入りつつある。約30万人のプロがそろったので知恵と知恵を組み合わせることで新ビジネス、新会社をつくることができる。やっとできるようになった。例えばコンサルティング会社と組むと面白いと思う。互いに異なる付加価値を持ったプロとプロ、能力と能力を掛け合わせると新しいマーケットが生まれるはずだ。そこにチャレンジしていく」

 知財商社アピール 広がる事業領域

 --今後の展開が楽しみだ

 「われわれは知財商社。プロ集団という営業資産、経営の土台を持っており、どことでも組める。各社の有価証券報告書を眺めていると『この会社はこんなことをやっているのか。組むとこんなことができる』と半分くらいはイメージがわく。そのためには営業資産をより強くして、プロのネットワークを持つC&Rグループの強みを知らせる必要がある。価値が分かると相手からやってくるはずだ。そのためにも、その社長に刺さるメッセージを発信する必要がある」

 50分野で展開目指す

 --営業資産を強くするにはより多くのプロを集める必要があるのでは

 「われわれが求めるプロとは知財を持っている人。また世界中で活躍できる職種、機械では決して代わることができない職種もプロの条件だ。その上で、海外を含めバーチャルでプロジェクトチームを設けて自由に活動してもらう。映画の場合、プロデューサーや監督といった中心メンバーはしっかり固め、現場スタッフはフリーランスを集めて制作する。終わるとチームは解散する。プロのスタッフは自分の能力を遺憾なく発揮できるプロジェクトに入れ代わり立ち代わりで参加する仕組みだ」

 --事業領域は広げるのか

 「拡大する。現状は17分野だが、50分野での展開を目指している。日本の産業の6割にリーチできるからだ。グループ会社も18に増えた。今期に入り、ウェブ制作やVR(仮想現実)・AR(拡張現実)開発などで高い技術力を持つGrune(グルーネ、福島県相馬市)、NHKとその関連会社の番組制作や編集部門へのスタッフ派遣のウイング(東京都渋谷区)の株式を取得し子会社化した。M&A(企業の合併・買収)は時間を買えるので加速度的に手掛けていく」

 「進出する分野については、基本的にどこでも伸ばせると自信を持っている。時代の環境変化にいち早く適応できる企業は強い。コロナ収束後の10年先、20年先を見通して先取りする企業が勝ち残る。そのためにも柱は1本(選択と集中)より多い方(多角化)がいい。庭園も桜だけを植えていたら楽しめるのは4月のみ。柳、楓(かえで)、松などがあれば一年中鑑賞できる。難しいのは同じ土壌で異なる草木を育てられるかだ。このノウハウの取得に30年を費やした。今は自信を持って多角化を推進していく」

 --採用も重要になってくる

 「積極的に中途採用を行っている。大企業の執行役員クラスも応募してくれるので積極的に採用している。これまでに培ってきたノウハウや築き上げた人脈と、自分の能力を分かっており、われわれの営業資産と組み合わせると何かができる。ただカルチャーに合うかどうかは重視している。染まらない人を採用すると失敗する。ビジネスを多角化しているので活躍の場はある。自分でチャンスをつかみたい人には『C&R社ならできる』とメッセージを発している」

 東京NBC会長に

 --ところで今年4月、東京ニュービジネス協議会(NBC)会長に就任した

 「会員企業の役に立ち、社業発展の原動力のベースが東京NBCと位置付けられる仕組みづくりに取り組む。前任の下村朱美会長が女性らしい温かみにより各委員会が自由活発に活動することができた。それにより会員同士の結束感、組織としての信頼感が醸成された。この土台の上に、さらに互いに成長し実利につながる組織にして『入会していてよかった』と心底言える仕組みを整えたい」

 --そのための新たな取り組みは

 「コロナの感染防止のためリモートワークが進み、オンラインでのセミナーや会議などの開催が有効だと分かった。会員企業の多くはコロナ禍で被害を受けており、新商品・サービスなどの情報発信の場、ビジネス創出の機会づくりに注力したい。会員の中には広報の発信が苦手な企業や、そこまで手が回らないアーリーステージの企業もあり、こうした企業の情報発信を東京NBCが積極的に引き受ける。オンライン会員もつくりたいし、世代や業態、地域を越えた交流も進めたい。コロナ禍が変革のいいきっかけになる。生かさない手はない」

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