変貌する電機 2020年代の行方

データサービス会社に転換する東芝 強みの社会インフラに集中 (1/2ページ)

 世界を代表する金融街である英国「シティ・オブ・ロンドン」。その最寄り駅の一つ、リバプール・ストリート駅はロンドンと英国東部を結ぶ主要ターミナル駅だ。コロナ禍の現在は利用者が減っているが、駅中央広場のコンコースが利用者であふれるのが日常の光景だった。

 英鉄道の運行支援

 英国の鉄道は複数の鉄道会社が同じ線路を利用する。2018年5月には政府が列車の本数を増やすよう要請したこともあり、主要ターミナル駅に入る手前で大規模な遅延が発生、社会問題化する事態となった。

 3つの鉄道会社が乗り入れる同駅も例外ではなかったが、同駅に乗り入れている鉄道会社「グレーターアングリア(GA)」は秘策に打って出た。遅延解消のため、東芝のデジタル技術を導入し、運行ダイヤ作成の支援を得ることにしたのだ。

 実務を担ったのは子会社、東芝デジタル&コンサルティングを中心とした対策チームだ。線路の細かなカーブや勾配状況、各車両の性能などをデジタルで忠実に再現。バーチャルの空間で、さまざまなシミュレーションを行い運行計画を分析、GAに改善点を指摘した。

 指摘は今年5月のダイヤ改正に反映された。東芝欧州社の矢崎貴久ゼネラルマネージャーは「GAからは、遅延理由を裏付け、モヤモヤを解消してくれたとの声が多い」と手応えをのぞかせる。近隣の鉄道会社にも営業をかけ、いずれも反応は良いという。英国には24社の鉄道会社があるが、矢崎氏は「同じプラットフォームを使ってもらい、全体の運行を改善したい」と意気込む。

 不正会計で経営危機に陥った東芝。生き残りに向け、「総合電機」の看板を捨て、社会インフラに特化したデータ活用サービス事業を中心とした会社に生まれ変わろうとしている。英国のGAとの取り組みは、今後の東芝が目指す姿を示している。

 東芝の強みは電力や原子力、鉄道、水処理などの社会インフラやPOS(販売時点情報管理)システムで高いシェアを持つ点だ。これら事業でデータを蓄積し、プラットフォーム化するビジネスモデルに成長の活路を見いだそうとしている。

 全員デジタル技術者

 車谷暢昭社長兼最高経営責任者(CEO)は「4万2000人の技術者全員をデジタル技術者にしたい」と述べるほど、大胆なビジネスモデルの転換をもくろむ。30年にデジタルとリアルを融合し、新たな価値を生み出す世界有数のCPS(サイバー・フィジカル・システム)テクノロジー企業を目指すのが大きな目標だ。

 15年5月に発覚した不正会計問題は東芝を奈落の底に突き落とした。西田厚聡、佐々木則夫、田中久雄の歴代社長3氏がチャレンジと称して幅広い事業で利益の水増しを促していた。06年に約6200億円を投じて買収した米原発子会社ウエスチングハウスも減損処理を隠し、原発事業は好調と偽るなど、幅広い事業で不正に手を染めていた。

 DNAはベンチャー精神

 東芝が不正な手段から手を引けなかった背景には経団連会長を輩出してきた名門ゆえ、野心が強いトップが自らの失敗を認めず、現実に目を背け、問題を放置してきたことがあった。その代償は大きく、今後の成長を担うはずだった東芝メディカルシステムズや半導体事業を売却せざるを得なくなった。6兆円前後で推移していた売上高は今、半分近くに減少した。

 社内にはトップを頂点に上司に物が言えない風土が広がり、不正を正すことができなかった。18年に外部から招聘(しょうへい)された車谷社長はオープンで風通しの良い職場づくりにも腐心する。

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