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コロナ禍の今、スポーツ組織の改革チャンスに

 新型コロナウイルスの猛威は、スポーツとて無傷でいられないほどだ。世界中のプロスポーツはその動きを止め、世界的規模の大会も中止または延期された。こうした中で、世界のスポーツ組織は、通常を回復するのにも苦闘し、プロ球団の多くは経営の維持すら危ぶまれている。大胆な改革こそ、いまやるべきことなのかもしれない。いや、逆に、いまこそ、やれるときなのかもしれない。(フリーランスプランナー・今昌司)

 経営的観点で適正化

 テニスの世界最高プレーヤー、ロジャー・フェデラー選手は、4月に世界のテニス界にあるツアー組織を一つに統合する、というアイデアを発信した。フェデラー選手はこうコメントしている。「いまこそ男子プロテニス協会(ATP)と女子テニス協会(WTA)が一つになるときであり、それがテニスのためになる」

 全豪、全仏、全米、英ウィンブルドンという4大大会、いわゆるグランドスラム大会では、男女が同一会場・同一日程で試合が行われ、世界中のファンを魅了している。年間を通して行われるツアー戦各大会も、同じように男女統合した組織で統括され、そこで力を合わせることによって、より多くの革新的技術を呼び込むことができ、結果としてより魅力的なファン体験を届けられるようになるのではないか、とフェデラー選手は考えているのである。

 もちろん、グランドスラム大会の各主催者との連携や国際テニス連盟(ITF)との連携も、より密接になると確信している。今年からATPが主催して国別対抗戦が1月に開催されたが、国別対抗戦といえば、ITF主催の男子のデビスカップ、女子のフェドカップがあり、テニスファンからも何をもって世界一というのか、非常に分かり辛(づら)い。

 加えて、グランドスラム大会を主催する組織も各大会別に全く様相が異なる。全豪、全仏、全米は各国のテニス協会が主催しているが、ウィンブルドンは大会会場の運営母体が主催している。それぞれに歴史があり、理念があり、経済的利益がある。しかも、富裕層を数多くファンに持ち、どんなスポーツよりも経済的価値が高い。

 そして、そこには常に熱狂的なテニスファンがいる。他のスポーツと同様だが、もともとテニスというスポーツに国境はもちろん、組織の壁も必要はない。経営的な観点から合理的な組織形態に適正化すればいいだけのお話である。非常にシンプルだ。世界の中では、こうした合理的な組織の最適化が、コロナ渦の影響や弊害を打破していくために、今後ますます加速していくように思われる。

 日本はなお利権争い

 かたや、日本のスポーツ界の組織構図は、複雑怪奇極まりない。利権といえばそれまでだが、同じスポーツでも縦割りの組織が乱立し、それだけならまだしも、それぞれの組織が利権を争っている。野球やゴルフはその典型例だ。ゴルフはカネまみれの対立からいまだ分裂したままだ。

 しかも、テニスに見られるような男女のプロゴルフ組織が協働しようとか、統合してもっと大きな利益を目指そうとか、将来に向けての理念すら感じられない。数年前、バスケットボールでも組織分裂問題が浮上し、シンプルに統合した結果、さまざまな課題が解決され多くのプラス効果を生み出している。

 時は、世界中のテニスファン、スポーツファンの目が、コロナ感染患者の収容施設にも使われたフラッシング・メドウのナショナル・テニス・センターに集まる全米オープンの季節。フェデラー選手のコメントが現実のものになるのか。日本のスポーツ組織こそ、事の成り行きを手本にすべきだろう。

【プロフィル】今昌司

 こん・まさし 専修大法卒。広告会社各社で営業やスポーツ事業を担当。伊藤忠商事、ナイキジャパンを経て、2002年からフリーランスで国際スポーツ大会の運営計画設計、運営実務のほか、スポーツマーケティング企画業に従事。16年から亜細亜大経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師も務める。

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