変貌する電機 2020年代の行方

「優等生」三菱電機、縦割り弊害を打破 オープンイノベーションに転換 (1/2ページ)

 電機業界で「優等生」と呼ばれる企業がある。過去10年で一度も赤字を出していない三菱電機だ。

 この10年、同業他社が痛みを伴う構造改革を強いられる中、ファクトリーオートメーション(FA)、自動車機器、電力システム、家電、エレベーター、人工衛星など幅広い事業を展開する同社は、「総合電機」の看板を下ろさずに済んだ。2000年代に不採算の半導体や携帯電話事業を切り離す構造改革を先行して実施。財務の健全性を重視した「バランス経営」で手堅く利益を上げてきた。

 だが、技術の進化や社会の変化が速まり、従来のビジネスモデルが通用しなくなっており、バランス経営だけでは今後の成長が見込めない。そうした危機感を強めた杉山武史社長は今年に入り、ある策を講じた。

 技術者ら30人選抜

 東京・丸の内にある三菱電機本社26階。東京湾を見渡せる開放感のあるフロアに、ラフな服装をした社員が集う部屋がある。談笑しながら打ち合わせをしているのは、社長直轄のビジネスイノベーション(BI)本部のメンバー。各事業本部から選ばれた技術者たちだ。

 BI本部の設置は今年4月。従来の縦割り組織の弊害を改め事業本部間の連携を増やし、新たな事業を創出するのが狙いだ。BI本部が起点となり、外部企業と新たな事業を創出する「オープンイノベーション」を推進する方針も打ち出し、スタートアップに100億円を投資することも決めた。

 杉山社長は「これまでは各事業本部の技術の深掘りが三菱電機の強みだったが、自前主義では限界がある。オープンイノベーションを展開しないと変化に対応できなくなっている。われわれの考え方を転換しないといけない」と訴える。

 BI本部のメンバーは約30人。各事業本部のほか、本社の元事業戦略担当やシリコンバレーの駐在員も在籍する。立ち上げ時は新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言の発令に伴い、リモートが中心だったが、半年たった今は社内に多くのメンバーが顔をそろえる。担当マネージャーの日高剛史氏は「2、3分の雑談が大事で、そこから実際にプロジェクトに発展した事例も出てきた」と手応えを感じている。

 成長期待の4分野

 BI本部が狙うのは、成長が期待される「モビリティー」「ライフ」「インフラ」「インダストリー」の4分野。新たな事業やサービスを創出するため、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)、第5世代(5G)移動通信システムなどの先端技術をフルに活用する。

 手本とするのは、自動車機器事業本部が中心となって進めている自動運転システムの開発だ。開発には人工衛星を手掛ける電子システム事業本部や、オランダの外部企業も加わっている。今後はBI本部が起点となり、こうしたオープンイノベーションの取り組みを全社横断的に広げようとしている。

 BI本部のメンバーは出身母体の事業本部の窓口となり、開発に必要な技術のヒアリングを行い、他の事業本部との連携を探っている。自社に良い技術がなければ、スタートアップやパートナー企業にアプローチし、開発を前進させる役割を担う。

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