リーダーの視点 鶴田東洋彦が聞く

日本バレーボールリーグ機構・嶋岡健治代表理事会長、地域密着でファン第一(2-1)

 「V」3年目 地域密着でファン第一

 新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中、日本バレーボールリーグ(Vリーグ)機構は17日、国内最高峰の「V.LEAGUE」をスタート。チームが主役となり、地域に根差したファンファーストなリーグ運営も3年目を迎える。嶋岡健治代表理事会長は「バレーで地域を元気にする。そのためには自立して稼ぎ、その収益を地域の盛り上げに還元することが大事だ」と強調、スポーツビジネス化を推進する。

 入場50%で利益出す

 --V.LEAGUEは2020-21年シーズン、男女50チーム(コロナ禍で4チームが辞退)が参加して開幕する

 「19-20年シーズンの終盤からコロナの影響を受けるようになり、男子ファイナルが無観客試合での開催を余儀なくされるなどした。3年目の今シーズンはコロナ対策に最大限の配慮を行い、開幕に向けて準備している。現段階では観客の『密』を防ぐため、入場数を定員の50%に制限する、いわゆる『リモート50』で臨むが、今後の状況次第では無観客もありうる」

 「チームには『自立して稼ぐ』ことを求めているが、会場をいっぱいにするのは無理。これで成り立つのかといわれるが、50%でも利益を出すやり方を考える。稼ぐということに選手も気づき、無観客試合でも地域を元気にするために精いっぱい頑張るはずだ。熱戦を伝えることでコロナ禍により萎縮している世の中を元気にしたい。そのために自治体、地元と連携を取って、できる限りの工夫で乗り越える。今シーズンのスローガンは“Set To Tomorrow”。明日へつなぐという意味だ」

 --「稼ぐ」という考え方は浸透してきたのか

 「参加チームは、大企業所属チーム、企業の冠を外したクラブチーム、地域企業を母体にしたチーム、企業に属さないクラブチームが混在する。バックグラウンドが違う中で同じコートに立つ。このため全チームが同じ価値観を持っているかというと疑問だ。目指すもの、求めるものは違う」

 「しかし成り立ちは違ってもバレーで地域に根差し、地域を元気にするというリーグ運営を目指す。その主体はチームであり、地域活性化のために動き、選手は子供が『かっこいい』と憧れる存在を目指す。そうすれば地域の人たちが試合に応援に行くようになり、人気が高まればスポンサーも増える。まさに稼げるチーム。企業チームであっても独立採算で自立できる運営が必要だ」

 相次ぐ休廃部を経て

 --以前は違ったのか

 「女子日本代表が金メダルを取った1964年開催の東京五輪から3年後に日本リーグが発足したが、参加チームは全て企業に所属していた。企業にとって福利厚生の一環で、社員が試合を応援することで一体感を生むことが目的だった。選手も会社から給与をもらうので企業チームから脱皮できなかった。私は日本鋼管(現JFEホールディングス)の選手だったが、松下電器産業(現パナソニック)や新日本製鉄(現日本製鉄)と対戦するとき、対抗戦のように社員が応援に駆けつけた」

 --高度成長期、バブル期は企業チームで成り立っていた

 「企業にとって福利厚生の一環なので予算を持ってチームを運営していた。応援に行く社員や関係者の入場料も含めて面倒を見ていたので自分の会社で完結する。企業スポーツの典型だが、チームはコストセンターでしかない。景気が良く業績も好調なときはやっていけたが、経営状態が悪くなるとコストセンターは『止める』となる。バブル崩壊後のリストラ局面では、多くの企業チームが休廃部に追い込まれた。バレー界も例外ではなかったが、休廃部後に独立してクラブチームとして生まれ変わったところや、所属企業から一定の支援を受けながら地域スポンサーを得て独立採算で頑張っているところもある」

 独立採算で自立して稼ぐチームを

 --だからチームには自分で稼ぐことを求めているのか

 「所属企業におんぶにだっこでは駄目。企業頼りでは先行き厳しくなるとの危機感から、Vリーグ機構は18-19年シーズンにV.LEAGUEを旗揚げした。生き残るためのコストセンターをプロフィットセンターにするのが狙いだった。プロ化といってしまえばそれまでだが、独立採算で稼ぐチームが理想だ」

 --そのために取り入れたことは

 「試合運営は、それまで都道府県バレーボール協会にホームゲームの開催を任せていた。このため観客が入らなくても仕方なかった。それをチームがホームゲームを開催する方法に切り替えた。興行権をチームに譲渡したわけで、試合の運営に関わる全ての責任をチームが持つ。つまりホームゲームの収支は原則、ホームチームが管理することになった」

 「入場料収入を得るため観客を一生懸命、集めるようになるし、スポンサー集めといった営業にも自ら動く。観客を楽しませるための会場づくり、演出も考えるようになる。選手による握手会やサイン会、バレーボール教室の開催の他、地元の飲食店とコラボした飲食販売、地元物産品の会場出店など趣向を凝らした集客に注力。ファンファーストに取り組むことで、ファンの定着を図り、次の試合も来てもらう。チームにとって試合会場は稼ぐ場になる。そのためにも(試合会場である)アリーナを満員にするのが目標だ」

 「オラが町の」存在

 --地域に愛されるチームになるために求められることは

 「時代とともにスポーツの価値、人々の見る目は変わる。企業城下町のチームもあるが、地域や自治体を挙げて応援をしてもらうには企業チームでは限界が来る。企業による応援は否定しないが、社員に加え、地域を巻き込むには『オラが町の』という存在にならなければならない」

 「サッカーのJリーグ、バスケットボールのBリーグではオラが町のチームになっているところが少なくない。自治体と連携し地域のイベントなどに積極的に参画しているからだ。選手が来てくれると子供は喜ぶ。企業のための選手から地域に根差した選手が増えれば、応援するため観戦に行く。地域との接点を太くすることで認知度を高めているわけで、生き残るためにはわれわれも地域の応援が欠かせない。自治体と連携し地域に根差した活動でファンづくりを促進していく」

 --スポーツ人気が多様化する中で、バレーが選ばれるには何が必要か

 「人気スポーツは野球、サッカー、バスケット、ラグビー、卓球と分散している。子供たちは『何をやろうか』と考えるとき、バレーが選ばれるには、憧れの選手が身近にいることではないだろうか。やはり地域密着が大事だ。私は『強くないと試合を見に来てくれない』との思いが強かったが、世界レベルでなくても地域密着なら人気スポーツになれる。そして地元チームの選手が日本代表に選ばれ『日の丸』を背負うと地元民は皆、応援する。すると地元が元気になり活性化する」

 「一方で、学校の部活動が指導教師の減少で衰退している。中学校ではバレーをやっていたのに、高校にはバレー部がなくてやむなく他のスポーツを始める高校生もいる。こうした学生を救いたい。そこでVリーグ機構では小中高校生のジュニアチームの仕組みを作ることにした。バレー人口を増やすためだ」

 世界と戦える実力に

 --底辺を広げるには選手の実力アップが欠かせない

 「そのためにはV.LEAGUEが世界に冠たるリーグになることであり、世界に伍(ご)して戦える、世界に遜色ないレベルを求めていく。私が現役のころソ連(現ロシア)や東欧が強かった。今は欧州ではイタリアが強い。なぜかというと、欧州は地続きでロシアやポーランドなどの世界一流選手が代表を退いた後、イタリアの国内リーグで活躍。刺激を受けて国内選手がレベルアップし、代表チームも強くなった」

 「日本も世界の一流プレーヤーが来日して世界トップレベルの試合がV.LEAGUEで行われている。世界に通じるトップアリーナスポーツを目指すためだが、その影響は大きく国内選手の成長に寄与、日本代表もレベルアップする。チームで活躍し注目された選手が代表に呼ばれオリンピックで勝つ。V.LEAGUEも盛り上がり、地域も活性化。チームも潤うという好循環を生み出したい。来年に延期された東京五輪の成績次第で次の展開が開けるので注目している」

【プロフィル】嶋岡健治

 しまおか・けんじ 中央大経済学部卒。1972年日本鋼管(現JFEホールディングス)入社。新潟支社長などを歴任。2014年日本バレーボールリーグ機構理事・副会長、15年代表理事会長。17年日本バレーボール協会代表理事会長兼務。1972年、ミュンヘン五輪バレーボール男子金メダリスト。東京都出身。71歳。

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