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自動車業界はまもなく沈没する トヨタが生き残るための唯一の方法 (2/3ページ)

 そもそも地球温暖化の抑制のためにやり玉に挙がっているのはガソリン車だけでなく、日本が誇る石炭火力発電所など化石エネルギー産業全般です。それに代わって世界的に増加していくクリーンエネルギーは電気自動車と極めて相性がいい。

 社会的に見て効率が良いのは、自家用車と自宅の太陽光発電といった小さな対応ではなく、世界中の自動車と世界中のクリーンエネルギーを1つの都市、あるいは国家単位の電力ネットワークとしてつなげることです。

 そして既存の電力会社はこういった新しいエネルギーインフラの構築には後ろ向きのため、この分野のリーダーとして革新的なスマートグリッド(次世代送電網)を構築できるのは電力産業の部外者である可能性が高いと考えられています。

 トヨタのような自動車業界の大資本はこの新規機会との相性がよく、本気でこの領域に参入すれば既存勢力を破壊的イノベーションで攻めることができる立場にあると考えられています。

 2040年代には自動車産業のリーディング企業が世界最大の電力会社になる可能性がある。これが自動車産業から生まれる未来の時価総額200兆円ビジネスの1つ目になります。

交通インフラ上で付加価値サービスを展開する

 2つ目は中国でアリババが先行しているように、5Gの技術を使って都市の中を走りまわる無数の自動車のビッグデータを収集・分析しながら、街全体、広域圏全体の交通ネットワークを最適化運営する領域です。

 これは一見、公共サービスが行えばいいように思えますが、実現には大規模な資本とR&Dが必要なため民間向きのイノベーション領域です。しかもそのインフラに付加価値サービスを加えられるという点で、プラットフォームビジネスのような特徴がある未来分野です。

 たとえば、アリババのようなIT企業が運営する都市交通プラットフォーム上を自動車で走行する場合、アマゾンのお急ぎ便のように特急レーンでより早く到着する有料サービスが考えられます。

 アメリカのフリーウェイの場合、一番センターライン寄りの車線は誰でも入れるわけではありません。しかし、そのような車線規制を入れることで一部の車を優遇する、あるいは一部の車は前方の信号がすべて青になるようにコントロールすることが未来にはできるようになる。そこを付加価値サービスとして売るイメージです。

 別の例ですが、スマートな交通プラットフォームであればウーバーやウーバーイーツのように、走行中のそれほど急いでいないときに何かを載せることで車をシェアして収益を稼ぐこともできるでしょう。ルート検索の履歴を学習してグーグルや食べログのように広告をリコメンドするようになるかもしれません。

 一度、都市全体に交通インフラのネットワークを手にした企業は、そのプラットフォーム上で自動車に関わるさまざまな付加価値サービスを展開できるようになるのです。

車が移動する意味に着眼して、生産性を上げる

 そして3つ目はソリューションです。人やモノが車で移動すること自体は手段であって、目的はビジネスで儲けたり、用事を済ませたりするためです。

 その前提で考えれば、自動車ユーザーのニーズは移動の生産性を上げることです。

 具体的に言えば、5Gデータを駆使して宅配で再配達のない最適な一日の配達ルートをAIが提案してくれるようなサービスイメージです。そういったデータを自前で用意できないような中小の運送会社は喜んでインフラへの付加価値コストを支払うはずです。

 同じエリアに存在する大半のユーザーのカレンダー情報、GPS情報、移動情報などがクラウド上でビッグデータとして解析され、ソリューションとして提供されることで、ビジネスや生活の一日の行動はずっと効率的になり生産性が上がる。特にアメリカのような車社会での恩恵は大きいでしょう。

 このように「なんのために人々が車で移動しているのか」に着眼した新しいタイプのソリューションを提供する企業が、2040年代の自動車産業のリーディングカンパニーになる可能性は高いのです。

 あえて私が外した4つ目の可能性としては「未来の車を創る」という領域がありえます。人工知能とLiDAR(ライダー)やミリ波レーダーなどを使う完全自動運転車をクリーンな電気エネルギーで創り出す。

 これは自動車会社と競合IT企業の多くが目指している未来です。しかし、ここをゴールだと捉えると2020年代の競争には勝ち残れても、2030年代の競争からは置いていかれて沈没する危険性がある。そのため私は「未来の車を創る」というコーポレートメッセージは危険だと考えています。

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