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アスリートに広がる「遺伝子分析」 けが予防、食事改善にデータ活用

 人が固有に持つ遺伝子を調べることで体質などが分かり、医療分野では病気のリスク診断などにも利用される「遺伝子分析」。これをスポーツの現場で活用する動きが広がっている。けがの予防に役立てたり、食生活に生かしたり-。持っている遺伝子そのものを変えることはできないが、トレーニングなどの環境を自分に合ったものに変えることは可能で、競技力向上の一翼を担っている。

 スポーツ界に導入されている遺伝子分析では、主に筋肉が「瞬発系」なのか「持久系」なのか▽筋肉がつきやすいか▽筋損傷(けが)をしやすいか▽疲労やストレスを受けやすいか▽体脂肪がつきやすいか-などの傾向が分かる。口の粘膜を採取し、分析機関を通じて数週間で判明するのが一般的だ。遺伝子分析をすることで、自身の体質が客観的データとして示されるため、それに基づいてトレーニング方法を見直したり、食事内容を変えたりすることが可能になる。

 遺伝子分析と選手へのカウンセリングをセットにしたサービスを、今夏に開始したスポーツ活動支援事業の「ハイクラス」(東京都渋谷区)は、これまでに柔道の日本代表選手やプロバスケットボール選手らの分析を手がけてきた。

 同社は選手との対話を重視し、分析結果をどのようにトレーニングに生かしていくのかについて、スポーツと遺伝子の研究を5年間行ってきた位高駿夫代表がアドバイスする。例えば、けがをしやすいタイプと判明すれば、ストレッチを意識的に増やしたり、ウエートトレーニングで負荷をかけすぎないよう助言する。

 ただ、遺伝子分析結果はあくまで情報の一つとの認識だ。遺伝子のタイプによってどの練習方法が良いなどの“正解”がないため、選手がどうなりたいかという目的に合わせた活用方法が求められるという。位高氏は「強みを伸ばすのか、弱みを改善するか。選手がトレーニング方法を考えるきっかけにしたい」と語る。

 9月上旬にカウンセリングを受けたボディービル全国高校選手権3連覇の相沢隼人(日体大)は、疲労回復の分野で課題があるとの結果が出た。「疲労があるとパフォーマンスが落ちる。遺伝子自体は変えられないので、休養を意識し、日常的にできることをやっていきたい」とトレーニングに役立てている。

 遺伝子分析結果をベースに、各選手に食事・栄養プログラム「ユアプロ」を展開するのは「キーマイン」(横浜市神奈川区)だ。普段の食事でエネルギーが足りているのかチェックし、各選手の体質に合わせてアドバイスする。

 プロサッカー選手や日本フットサル連盟のFリーグなどで導入されており、8月末にはサッカーJ2水戸ホーリーホックと契約し、共同研究を開始した。選手に送ってもらった食事やその日のトレーニング内容を元に管理栄養士がフィードバックし、選手の身体面の変化を見ていくという。

 「選手の目的はそれぞれ異なる。当然、それによって練習方法も違うし、そのエネルギーとなる食事も違ってくる。大事なのは、(体質情報を)生かし続けることだ」とキーマインの長峯誠代表。スポーツ界は、遺伝子情報を活用するまでに変わりつつある。(久保まりな)

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