開発物語

第一三共ヘルスケア「ミノン」(2) 多様な人材 風通しの良さ強み

 ≪TEAM≫

 第一三共ヘルスケアは、旧第一製薬と旧三共の経営統合による第一三共の誕生に伴い、大衆薬事業などを手掛ける会社として2006年4月に発足した。同じ年に第一三共は、アステラス製薬傘下で同業のゼファーマを買収。第一三共ヘルスケアは、その翌年にゼファーマを吸収している。

 アステラスは旧山之内製薬と旧藤沢薬品工業が統合して生まれた企業なので、第一三共ヘルスケアは製薬大手4社の流れをくんでいることになる。取扱商品には、第一三共ヘルスケアの誕生前に4社が開発したものも少なくない。

 全身保湿剤の開発で中心的役割を担った礒野涼子さんは、そうした会社の成り立ちや医薬品中心の事業内容が、科学的根拠を特に重視し、品質面で妥協しない姿勢につながっていると指摘。だからこそ、開発にあたっては「中途半端なものは作れないとの思いが強かった」という。

 品質面で妥協しない姿勢は、約8年に及んだ開発期間にも表れている。一定水準に達しなければいつまでも商品化できない半面、良い商品ができるならコストや手間ひまを惜しまない。開発を率いた北川晶さんは「懐の深い会社。時間的な制約のあるモノづくりが増える中、こんなに長く待ってもらえたことにすごく感謝している」と振り返る。

 一方、同社の製品づくりを語る上では、多様な人材が集まっている点も見逃せない。

 同社は以前から中途採用を積極的に行っている。同社の研究者のうち、製薬大手4社の時代に入社した社員と、06年の発足後に新卒で入社した社員、そして中途入社組がそれぞれ約3分の1ずつを占める。全身保湿剤の開発にあたった北川さんや礒野さんは、いずれも中途入社組だ。

 さまざまな出身の社員が集まることで、風通しの良い企業文化が生まれ、社員同士の自由で活発な意見交換が可能になる。研究面でも、ユニークなアイデアの源泉になっているという。

 ≪MARKET≫

 年々拡大 海外向け販売強化の好機

 敏感肌対応商品の市場は年々拡大している。

 矢野経済の調査によると、医薬部外品や化粧品を含む2018年度の敏感肌市場は、メーカー出荷額ベースで前年度比8.7%増の778億円に拡大。19年度はさらに増え、816億円になったとみられる。

 市場拡大の背景には、敏感肌やアトピー性皮膚炎に悩む人の増加がある。第一三共ヘルスケアによると、自身を敏感肌だと感じている人の割合は、16年に54%だったが、19年には65%まで増加した。

 敏感肌対応をうたった医薬部外品や化粧品では、花王の「キュレル」や常盤薬品工業の「ノブ」、資生堂の「dプログラム」といったブランドの商品拡充が目立つ。

 その中にあって、ミノンはまだ敏感肌という概念が存在しなかった時代から、肌の悩みに応え続けてきたパイオニア的存在で、新商品投入でも先行している。薬用ボディーソープでは、敏感肌向け以外を含めた全製品の中で、ミノンが最も売れているという。

 敏感肌の自覚者は海外でも増えており、近年は外国人観光客が国内のドラッグストアなどで対応商品を買い求める姿も目立った。コロナ禍で足元のインバウンド需要は低迷しているが、この状況は逆に、海外販売を拡大したり、越境EC(電子商取引)を拡充したりするチャンスともいえる。

 強いブランドの条件とは何か。今回の取材中、ずっとそのことを考えていた。

 日本はブランドを育てるのが苦手とされるが、強力なブランドがないわけではない。ミノンもその一つだ。敏感肌という概念すらなかった時代から市場を開拓し、50年近くにわたり愛され続けてきたブランドはそうはない。

 ≪FROM WRITER≫

 強いブランドの共通点として、一つの普遍的な魅力をかたくなに訴求し続けている点がある。ミノンの場合、科学的根拠に裏打ちされた「安心・安全」がそれに該当するだろう。もっとも、伝統にあぐらをかいているだけなら消費者は必ずそっぽを向く。安心・安全という強みを守りつつも、新機軸を取り入れていくことが必要だ。

 コレステロールには健康に悪いイメージがつきまとっている。販売現場では、その良さを説明するのに苦労するだろう。しかし消費者は、自らの購買行動を通じ、同社が挑戦したことを評価するにちがいない。(井田通人)

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