フジテレビ商品研究所 これは優れモノ

 ■東京海上日動火災保険 M&A保険「M&A NEXT」 事業承継向け 売主・買主のリスクをカバー

 戦後日本の経済成長を支え、現在も国内企業の大多数を占める中小企業。近年は、経営者の高齢化などで事業譲渡するケースも少なくない。今回の「これは優れモノ」は、そうした事業承継をバックアップする日本初の保険を取材した。

 「中小企業の事業承継は、日本の社会的課題です」と話すのは、東京海上日動火災保険企業商品業務部責任保険グループ課長代理の原晶子さん。東京の上野・錦糸町エリアの営業で現場経験を積み、ここ10年ほどは企業向け保険商品とそれに付随するシステム開発に携わっている。

 ◆650万人の雇用喪失も

 中小企業庁によると、今後10年で70歳を超える中小企業経営者の数が245万人に上り、その半数が後継者未定という。その結果として、累計で650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる恐れがあるとされる。

 地方経済を支えるのは、各地域の中小企業だ。国内雇用の約7割を生み出し、特に女性が継続して働く割合や女性管理職の比率も、大企業に比べてはるかに高いというデータもある。しかし、家族経営が占める割合も多く、少子高齢化の波をもろに受け、事業承継に支障をきたすケースが増えている。

 事業承継では、後継者の経営能力や取引先との関係維持、技術・ノウハウの維持、さらには相続税の問題などクリアすべき課題も多い。そこで、事業譲渡などのM&A(企業の合併・買収)を選択する経営者も少なくない。

 「M&Aというと大企業が海外企業を買収するイメージがあるかもしれませんが、実際には国内企業同士の案件が多数です」と、原さんは中小企業を中心にM&Aが増加する傾向にあると話す。

 M&Aでは売主と買主にそれぞれリスクが発生する。売主は買収契約書上、財務や法務などの開示事項に虚偽がないことを表明し保証するが、表明した内容に違反があると売主は買主に対して違反によって生じた損害を払わなければならない。一方、買主は、会計士や弁護士が買収対象企業の調査(デューデリジェンス)を行うが、「簿外債務があるなど、調査で事前に判明しないケースもあり、M&A完了後に想定外のトラブルが発生するリスクがある」(原さん)。

 実際のM&Aでは、売主は売却後のリスクを最小限にするために限定的な保証を希望し、買主は対象会社を安心して手に入れるために広範囲な保証を希望することが一般的だ。そのため、表明保証の範囲や内容について売主と買主の両者が合意することは難しいといわれており、買収交渉が決裂する一つの要因となっている。

 ◆国内では初の商品

 M&Aが活発な欧米企業では、M&Aの際に売主・買主のリスクをカバーする保険商品が以前から広く活用されているが、これまで日本ではほとんど普及していなかった。「国内企業のM&Aにおいても同様のリスクはあったが、日本語対応が可能な保険商品がなく、企業のニーズに応えることができていなかった」(原さん)。

 そこで同社では、今年1月に日本初の国内企業同士のM&Aを対象とした「国内M&A保険」の販売を開始。さらに、8月には中小企業のM&Aを対象にした「M&A NEXT」の提供を開始した。「ニュースリリース後、想定以上のお問い合わせを受けています」と原さんは、確かな手応えを語った。

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 東京海上日動火災保険(前・東京海上保険)は1879年に日本初の保険会社として誕生した。創業時の株主には明治期の実業家・渋沢栄一の名前もある。同社は、その後も日本初となる自動車保険を販売するなど先駆的な商品を開発、日本の損保業界をリードしてきた

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 ≪interview 担当者に聞く≫

 □東京海上日動火災保険企業商品業務部責任保険グループ課長代理・原晶子氏

 ■国内企業同士対象で審査も証券もすべて日本語

 --日本初の保険だ

 日本国内の企業同士が行うM&A、特に中小企業が行うM&A専用の保険商品は、業界初になる。これまで国内では、一部の外資系損害保険会社が、主に海外企業とのM&Aを対象にした商品を提供していた。引受審査には資料を英文にすることが必要で、保険証券も英語で発行されていた。保険契約の見積もり依頼だけで、数百万円単位の費用が発生した。当社が1月から販売した「国内M&A保険」は、引受審査も保険証券の発行も全て日本語で行うため、翻訳などの余分な費用や時間も節約できる。見積もり費用も無料だ。

 --中小企業のM&Aも増えている

 1月から発売した「国内M&A保険」は、買収金額が10億円以上の比較的大型のM&Aを対象にしていたが、中小企業を中心に、買収金額1~10億円程度の中小規模の買収案件に対応する保険の要望が多く寄せられた。このため、8月に「M&A NEXT」をリリースした。保険料も300万円からということで、低額に抑えている。「国内M&A保険」と同様に全て日本語で対応し、見積もり費用もかからない。

 --どんなリスクをカバーするのか

 M&Aでは事前に買収対象会社の財務・法務・税務などについてデューデリジェンスを行い、買収価格や買収条件などを決めていく。ただ、未払いの買掛金などの支払債務を買収対象会社が負っていたことが買収完了後に判明し、トラブルになることもある。また、株式や労務、契約に関する問題が生じることも多い。そうしたリスクを担保するための保険で、買主に損害が発生した場合に、買主は売主への損害賠償請求の代わりに保険金請求をする。売主にとっても、後から損害賠償を求められるリスクを回避できる。

 --今後の展開は

 M&A保険は引受審査など独自のノウハウが必要でリスク計算も複雑だ。この保険に対するエキスパートを養成するとともに、M&Aのアドバイスを行う弁護士・会計士や中小企業とのつながりが強い地方銀行などとも連携して普及させていきたい。この保険を通じ、中小企業の事業承継を支援し、日本経済の発展に寄与したい。

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 ■フジテレビ商品研究所

 「企業」「マスコミ」「消費者」をつなぐ専門家集団として1985年に誕生した「エフシージー総合研究所」内に設けられた研究機関。「生活科学」「美容・健康・料理」「IPM(総合的有害生物管理)」の各研究室で暮らしに密着したテーマについて研究している。

  http://www.fcg-r.co.jp/lab/

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