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温暖化で1次産業に重大な影響 環境省報告 1等米や漁獲量が減少 

 地球温暖化によりコメの収量減やマグロなどの漁場変化が生じ、今世紀中に国内の1次産業に深刻な影響が出るとの評価報告書を環境省の有識者会議がまとめた。豪雨で物流や製造業の被害も増大するなど、評価した約70項目のうち7割ほどに「特に重大な影響」が及ぶと予測し、政府に対策強化を求めている。

 農林水産業や水資源、健康といった分野の評価項目の最新知見を踏まえ、5年前の報告書を更新した。環境省は、温暖化影響の軽減を図る「気候変動適応計画」の来年度の改定に反映させる。

 コメの収量は2061~80年ごろまで増加傾向だが、今世紀末には減少に転じると分析。品質が低下する事例が現在でも各地で確認されており「40年代には白く濁る割合が増え、1等米の減少で経済損失が大きくなる」とした。果物の適地が北上し、品質が低下したり栽培が難しくなったりする地域が出るほか、乳牛など家畜の生産能力が下がると予測した。

 漁業では、マグロ類は今世紀末ごろに水温上昇などで「太平洋の亜熱帯域で漁獲量が減り、分布が北東に移る」と評価。サケ・マス類は日本周辺の生息域が縮小し、サンマは漁場が遠くなる上、大きさは小ぶりになるとして小規模漁業者への影響に懸念を示している。

 渇水の深刻化が見込まれるほか、雪解けが早まり、水の需要が高まる時期に河川の流量が減り「需要と供給のミスマッチが生じる」とした。

 台風の勢力増大などによる河川の氾濫や、高潮による浸水リスクが高まると分析。損害保険金の支払額が膨らみ、商業施設や工場の休業、サプライチェーン(調達・供給網)の寸断による損失が増える恐れを指摘した。

 熱中症の死者や救急搬送数は既に増加傾向だが、さらに悪化し、患者は特に北海道、東北、関東で増えると予測。今世紀末には東京と大阪で「日中に屋外で働ける時間が今より30~40%短くなる」と見積もっている。

 「適応策」強化 被害抑制へ必須

 環境省有識者会議の報告書は、日本国内でも社会や暮らしのさまざまな面で地球温暖化の影響の直撃が避けられず、それを前提に、できるだけ被害を抑える「適応策」を強化する必要性を鮮明にした。温室効果ガスの排出削減だけではもはや足りず、両輪で推進する必要がある。

 温暖化への「適応」は、自然環境、治水や利水の状況、農林水産業の特色や産業構造といった地域の実情により変わってくる。このため自治体の役割が重要になるが、国もきめ細かな知見の提供や、技術や資金面の十分な支援が欠かせない。

 一方、新型コロナウイルス禍による経済活動の停滞で世界の二酸化炭素(CO2)排出が減っている。しかし一時的な現象にとどまり、温暖化抑制の効果としては「焼け石に水」との見方が強い。排出削減の努力を先延ばしする余裕はないのが現実だ。

 欧州などを中心に、コロナ禍からの経済復興で環境対策に力点を置く「グリーンリカバリー」の動きが強まっている。日本にその機運は乏しいが、温暖化被害を減らすためには旧来の姿に戻ることに固執せず、再生可能エネルギーの大胆な導入など脱炭素社会に転換することが求められる。

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