動き出した働き方改革

障壁打破へ工程表・仕組み作りを

 日本働き方会議は9月14日、一般社団法人設立登記を記念して「日本の働き方を問う!!」と題するシンポジウムを開催した。産経新聞社、フジサンケイビジネスアイ(日本工業新聞社)、システム科学、可視経営協会が後援し、あしたのチームほかが協力。働き方改革にどう取り組むべきかについて、同会議の名誉座長を務める橋下徹・元大阪府知事と働き方改革を先導する専門家2人、起業家2人が熱弁をふるった。コロナ禍に対応して、収容能力400人の東京サンケイプラザ(東京・大手町)に約60人限定で聴衆を迎え入れる一方、WEBライブ中継も実施。全国の約1500人が視聴した。

 「日本働き方会議」は、業種の垣根を越えて日本企業が新時代の働く仕組みを共有するための総合協議体として今年春に発足、このほど一般社団法人として設立登記した。シンポジウムでは冒頭、同会議共同代表理事の鶴田東洋彦・日本工業新聞社社長が挨拶し、「日本企業はコロナ禍で今までの働き方を否応なく変えざるを得なくなった。どう変えるべきか、このシンポジウムを通じて指針を示せればと思う」と語った。

 続いて、橋下氏が「変革の実行力」と題して特別講演を行った。橋下氏は「働き方改革、生産性向上が日本の課題だということは何十年も前から言われているが、実行しなければ意味がない。今回、民間の皆さんに実行してもらうというこの会議の趣旨に大いに賛同というか、面白すぎるなと思い、名誉座長に就任した」と、まず同会議に関わった経緯を説明。「実際に実行するとなると法律の壁、制度の壁にぶつかる」と働き方改革の難しさに触れ、「私の法律事務所もコロナ禍でテレワークを導入しようとしたらいろんな壁にぶつかった。その一つがはんこの壁だ」と述べた。

 そのうえで、「コロナ禍をきっかけに一気に働き方改革、生産性向上、ホワイトカラー業務のIT(情報技術)化を進めることが絶対に必要だ」と強調。「頭を使う仕事はいかにオフの時間を確保するかというのが良い仕事を生み出すための鉄則。IT化で無駄な時間をどんどん削って、できるかぎりオフの時間を作ることが生産性向上のいちばんのキーポイントになる」と指摘した。「変革を実行するには具体的な工程表とそれを作る“装置”が必要だ」とも言及。装置とは指揮・命令権限を付与したチームや、経営トップの大号令など変革を促す仕組みづくりのことだと説明した。

「業務情報の可視化を」

 働き方改革に不可欠なIT技術と革新マネジメント技術に関する講演が続いた。日本働き方会議理事の木村丈治・NTTアドバンステクノロジ社長の講演は「真のDXによる“働き方改革”の実現に向けて」がテーマ。木村氏はまず、「単純作業を自動化するための『WinActor』というRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールを世に出し、企業の働き方改革あるいはデジタルトランスフォーメーション(DX)の最初のトリガーとして活用してもらっている」と自社の事業を説明。「日本における業務の自動化は個別業務に限られ、全体プロセスの自動化は手つかずだ。コロナ禍で厳しい状況にあるが、ピンチをチャンスに」と訴えた。

 また、同社は過去にセキュリティインシデントを起こしたのをきっかけに、社員が個人で書類や記憶媒体を保持しないよう徹底し、「全ての情報をクラウドで全社一括管理できるようにしたため、在宅勤務にスムーズに移行できた」と強調。「セキュリティ対策をとらずに在宅勤務を導入するのは非常に危険だし、本当の意味での改革はできないと思う」と警鐘を鳴らした。

 日本働き方会議代表理事の石橋博史・システム科学社長は「ユーザー主体で進める生産性向上の実践法」と題して講演。

 最初に、「日本働き方会議は、全国の皆さんに成功事例を紹介してもらう講座をたくさん開いていく。そこで学んだ人が会社に持ち帰って実践するということを柱にして、その成果をどんどん充実させるとともに、みんなで共有する場にしていきたい」と日本働き方会議代表理事としての抱負を表明したうえで、システム科学が多くの企業向けに提供している独自の業務プロセスの可視化法やチャート作成システムなどの技術を使った変革のベースづくりについて説明した。

 この中で石橋氏は同社の技術について、「管理・間接部門の業務情報を処理する過程を全て目で見て分かるようにすることが可能だ。業務情報の可視化はイノベーションを起こす動機になる」と強調。「私どもが企業の変革を支援するときの特徴はマンツーマンで指導することだ。だからコンサルではなくカウンセルという姿勢だ。ドラッカーは、日本人は世界に類のない能力を持っていると言った。その言葉を頼りにして、私は事前に、企業のトップに経営方針と活動目標を明確にしてくださいとお願いする」などと語った。また、「業務情報の可視化によって電子マニュアルさえできれば、最少人数で最良組織をつくることができる」とも強調した。

テレワーク拡大はチャンス

 講演に続いて、「働き方改革を推進する環境づくり」をテーマにパネルディスカッションが行われた。パネリストとして登壇したのは、美容関連情報サイト「@cosme(アットコスメ)」を運営するアイスタイルの山田メユミ取締役とブイキューブ社長で経済同友会副代表幹事を務める間下直晃氏という2人の起業家。これに橋下徹氏と石橋博史氏が加わり、青山博美・フジサンケイビジネスアイ企画委員がコーディネーターを務めた。

 アイスタイルの共同創業者である山田氏はこの中で、「26歳で起業して以来、猪突猛進でブラックな働き方をしてきたが、出産を機に働き方を見直し、会社としてもダイバーシティ(多様な働き方)を目指すようになった」と語った。かつては仕事をする上で男女の違いはないと考えていたが、子供を抱えて働くようになって、それは間違いだったと痛感。「女性が多い職場なので、本気でダイバーシティに取り組まないと労働人口が減少していく中で、強いチームを作れないと考えた」と強調した。

 具体的には別会社を作って、働く場所と時間を大幅に自由化。その仕組みを本体に徐々に反映させているという。例えば、「サテライトオフィスでも自宅でもどこでも仕事をできるようにし、朝の5時から夜の10時までのどの時間でも働けて、その間、保育園に子供を迎えに行くなどの中抜けを何度でもできるようにした」と述べた。

 ブイキューブを学生時代に創業した間下氏は、「テレワークで日本を変えるということをベースにさまざまな取り組みをしている。その根底にあるミッションはイーブンな社会の実現だ。東京でないと仕事ができないとか、子供がいるから仕事ができないといった不平等をなくし、機会の平等を実現していくことだ」と、同社の事業内容を説明した。

 さらに、「時間と場所を選べる働き方は、テレワークを活用することで可能になる。これまで実現できなかった最大の理由は、社内で対応できても社外が対応できなかったからだ。顧客や行政に『来てくれ』と言われれば出向かざるを得ない」と言及。「それがコロナ禍によって、『来なくても良い』に一変した。働き方を劇的に変えるチャンスだ」と強調した。

 最後に橋下氏が大阪市長時代に、市役所職員の猛反対を押し切って大阪城西の丸庭園をイベント会場として民間に貸し出すことを初めて許可したときのエピソードを披露。職員が次のイベントを提案してくるようになったとして、「トップがここまでならやっていいと許容範囲を示せば、現場の変革のモメンタムが動き出す」と締めくくった。

 シンポジウムの最後に、日本働き方会議の関田裕事務局長が同会議について説明した。それによると、同会議は一人一人の社員、そして企業が生産性を向上するための(1)実践技術(2)実践すれば成果が出る仕組み(3)講座-を提供していくという。

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