リーダーの視点 鶴田東洋彦が聞く

アキュラホーム・宮沢俊哉社長(2) 3回倒産危機 顧客の心つかむ大切さ学ぶ

 --大工出身の「カンナ社長」が1978年に創業してから約40年で、従業員1200人、売り上げ460億円超の企業に育て上げた。振り返ると

 「実家は祖父も父も大工の棟梁(とうりょう)だった。『棟梁、棟梁』と皆から慕われ、注文主が一升瓶を下げて『家を建ててください』とお願いに来る。そんな姿に憧れて15歳で埼玉県の工務店にでっち奉公に行き、19歳で独立した。新築住宅の元請けをやりたかったが、若造のところに仕事は来ない。結局、下請けの仕事ばかりだったので心機一転し、営繕(リフォーム)を始めた。街中を歩きながら困り事を探していると、不明瞭な価格に不安を持っていることを知り、『いくらで請け負います』とチラシに価格明示すると電話が殺到した」

 --分かったことは

 「大事なのはお客さまの心をつかむこと。これまで3回ほどつぶれそうになった経験から分かった。最初は下請けで失敗した。下請けいじめが横行していた時代で1億円の売り上げにもかかわらず1200万円の赤字を出し、生きた心地がしなかった。リフォームで成功したので新築住宅に参入したときが2度目。今でいうデザイナー住宅で勝負したが、注文が入らず赤字。お客さまが住みたい住宅ではなく、私が満足する“作品”をつくっていたからだ」

 「3回目は輸入住宅に進出したとき。当時は欧米に憧れる時代で、安くてデザインも魅力的だったが、興味を持ってくれても注文に至らない。人生最大の買い物だから保守的になることを知った。7億円の借金を抱え瀕死(ひんし)状態に陥った。こうした経験から、自己満足のビジネスでは成功は続かない、マーケティングが重要だと学んだ」

 --そこに成功の秘訣(ひけつ)がある

 「偶然うまくいって次も成功するとは限らない。マーケティングにより顧客ニーズを知れば、偶然の成功でも必然にできる。成功の原理原則が見えてくるので、それを極める。そのためには軸をしっかり持つこと。『人生は独楽(こま)』という言葉がある。しっかりとした軸がないと独楽はうまく回らない。しかも早く回しすぎると場外に飛び出してしまい、遅すぎると倒れてしまう」

 「人生や経営も同じで、しっかりとした軸を持つことだ。焦って時代の先を行きすぎても、古い考えに固執してもうまくいかない。環境変化への対応、変えてはいけないことは変えない、自己満足も駄目だし、誰かがいうからやるというのも駄目だ。これらは不変の法則で、50歳で分かった。本当に経営に自信を持ったのは60歳になってからだった」

 --休日の過ごし方は

 「頭を使うより体を動かす方が大好きなので日曜大工。暇ができると気づけば夜中までやっている。といっても、もともとが大工でリフォーム業も手掛けたので電気や水道工事など何でもできる。住み心地、住み応えを追求するため自宅を実験台に常に改造している。自ら作って家族が体験し、不満があれば解消して実用化するというパターンを繰り返している」

 --座右の銘は

 「造語だが『夢を抱いて道を究める』。人として、企業として、『こうなればいい』との思いや夢を持つこと。それもなるべく高みの夢、遠い夢がいい。自宅の床の間には、『夢』と『道』の2本の掛け軸を交互に掲げている」

 「社名のアキュラ(AQURA)だが、Accurate(的確な、正確な)とQuality(品質)から生まれた造語だ。唯一無二でオンリーワン企業を目指して名付けた。(ホンダ創業者の)本田宗一郎のものづくり、チャレンジ精神が好きでホンダの米高級ブランド『アキュラ』も意識した。英語での社名表記に『Q』を入れたのは品質、サービス、価格、デザインを匠の心で追求するという意味合いを込めた」

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