2021 成長への展望

J.フロントリテイリング社長・好本達也さん 現代風ギフト提案、新市場開拓

 --コロナ禍の2020年を振り返って

 「5月に社長に就任したが、本当に激動の1年だった。ただ悪影響も多かったが、気づきとチャンスももらった。市場が少しずつ縮小していたら、どこで決断したらいいか分からなかったが、今回は一気に売り上げが減って、このままでは生き残っていけないということが分かった」

 --消費の姿というものは変わったか

 「例えば東京駅の大丸は入店客数が多い店で、販促活動をほとんどしなくても、平日は鉄道で会社員が来てくれる。週末は旅行客が来て、新幹線への持ち込み弁当が売れた。今は多くの会社員がリモート勤務。これが永久に続くとは思わないが、以前のように戻ることもない。圧倒的に売れないのは服と靴。リモート会議ではみんなカジュアル。でも品ぞろえを変えるのは短期的には難しい。そこが一番の泣きどころだ」

 --新たな消費にどう対応していくのか

 「今までは販売員も店に来てもらうことを前提に、電話やダイレクトメールなどで販促していた。それがアプリやチャットを活用しながらコミュニケーションを取っている。顧客の好みも分かってやり取りできるのがインターネット専業とは違う強みだ。外商担当も今はタブレット端末で商品提案している。以前は車で回っていたが、以前より多くの顧客の相手ができる。以前は緊急事態宣言に手も足も出なかったが、今度は顧客の手をつなぎ留められるのでは」

 --大都市の駅前に店舗を構えるなど、従来の百貨店モデルは変わるのか

 「今後、どんなマーケットが広がっていくのか分からない状況だ。今までは商品カテゴリーが過剰だったら別のカテゴリーで埋めてきたが、百貨店の持っているカテゴリーで代替するのに限界が起きている。違う機能で埋める必要がある。パルコのノウハウで百貨店を埋める場合も、逆も出てくると思う。例えば大丸須磨店(神戸市)は図書館を誘致するほか、地元のテナントにも入ってもらう。百貨店の面積をぐっと圧縮して作っていくことも必要になる」

 --2021年はどう進めていくか

 「一度、手放してしまったマーケットは戻ることはない。今後の成長は新たなマーケットを取りに行くしかない。リアルの価値が見直され、百貨店というのは風習や慣習というものを深く理解しながら、ギフトを提案してきた。簡素化する中でノウハウが薄れつつあるが、これに現代風な手法を取り入れていく。こういうのを本来、やるべきなのかなと思う」

【プロフィル】好本達也 よしもと・たつや 慶大経卒。1979年大丸入社。大丸松坂屋百貨店経営企画室長、同社長、J.フロントリテイリング常務などを経て、2020年5月から現職。大阪府出身。

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