2021 成長への展望

ヤマハ発動機社長・日高祥博さん 二輪電動化、日常の移動・通勤から

 --新型コロナウイルスの影響は

 「2020年はさまざまな活動が寸断されたが、国外ではロックダウン(都市封鎖)解除後、夏季休暇シーズンと重なったこともあり、需要が回復した。商品を買いたくても買えなかったリーマン・ショックの頃とは事情が異なる。貯蓄率が上昇し、政府による補助金の効果も先進国を中心に大きい。密を回避するため、二輪車でパーソナルな移動をし、近場でアウトドアを楽しむ傾向もある」

 --各事業の見通しは

 「まずは市場への供給を途切らせないようにしたい。先進国向けの二輪車事業、船舶や船外機といったマリン事業などは上半期まではフル操業する見込みだ。市場への在庫補給を含めて供給していく。下半期以降は予断を許さないが、マリン事業は通年で好調を維持できると見込む。新興国向け二輪車販売も毎月少しずつだが、回復している。半導体製造装置などロボティクス事業も中国向けが活発だ。年間を通じて回復すると思う。工場内で近くに人間がいても、けがをさせないよう安全に配慮した協働ロボットは世界中で需要が見込める。21年には商品化したい」

 --政府は50年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げている

 「電動化については、ユーザーが求める商品価値と規制の両方の視点で考えなければならない。開発コストの改善がなければ、ユーザーのニーズには応えられない。二輪車の環境負荷はそもそも小さいが、規制は加速していく。50年までに製品使用時の二酸化炭素(CO2)を10年比で半減させるなどの目標を示していたが、できるだけ早期に見直したい。相当の前倒しが必要だ」

 --電動化に向けてどう取り組むか

 「ユーザーを無視して環境規制の強化が進むわけではないと思う。二輪の電動車はまず、日常の移動や通勤に使うことが想定される。趣味で乗る大型バイクの電動化には課題がある。高価格で、重い商品が果たして買ってもらえるかは疑問だ。四輪の電気自動車(EV)向けモーターの開発受託については、問い合わせが多数寄せられ、1社と契約を結んだ」

 --前二輪、後一輪の三輪バイク「LMW」への期待は

 「転倒しにくくなってきたが、安全アシスト機能は改善の余地がある。普通四輪免許で運転できる乗り物にいずれ進化させたい。今まで二輪車に興味がなかった消費者にアピールできる商品を目指す」

【プロフィル】日高祥博 ひだか・よしひろ 名大法卒。1987年ヤマハ発動機入社。主に二輪車の販売に従事後、企画・財務本部長などを経て、2018年1月から現職。愛知県出身。

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