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5G情報漏洩 営業秘密に企業の意識低く 過去に海外流出も

 携帯電話大手ソフトバンクの高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムに関する営業秘密を持ち出したとして、同社から転職した楽天モバイル社員の男が警視庁に逮捕された。携帯電話事業に遅れて参入した楽天と各社との5Gをめぐる技術競争の激化が背景にあったとみられる。過去には海外のライバル企業に営業秘密が流出したケースもあるが、捜査幹部は「企業側の意識は依然として低い」と話す。

 「携帯大手の社員が好待遇で誘われ、楽天に移籍したというケースはよく聞いていた」。男が逮捕された12日、通信業界関係者はこう明かした。

 映画などが短時間でダウンロードできるようになる5G。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社は昨年3月にサービスを始めたが、同6月にサービス開始を予定していた楽天は、新型コロナウイルスの影響を理由に延期し、実際に始めたのは同9月末だった。

 ソフトバンクによると、今回、男が持ち出したとされる営業秘密は4Gと5Gネットワークの基地局設備、基地局や交換機を結ぶ固定通信網に関する技術情報といい、こうした情報は業界で特に重要とされる。業界関係者は「それまでの職務で得た経験から助言することはあるだろうが、営業秘密を持ち出したという容疑が事実なら論外だ」と指摘した。

 営業秘密の漏洩(ろうえい)は過去にも相次ぎ、海外の競合他社に持ち出した事例もある。東芝のフラッシュメモリーの研究データを韓国企業に不正に流出させたとして、警視庁は2014年3月、不正競争防止法違反容疑で提携先の半導体メーカー元技術者を逮捕した。

 この事件などを受け、経済産業省は15年に同法を改正。違反した個人の罰金を最大1000万円から2000万円に、法人は3億円から5億円に引き上げた。海外での使用を目的とした行為は、改正法では個人の罰金を最大3000万円、法人を10億円とした。

 警察庁によると、営業秘密を侵害したとして警察が摘発した事件数は、13年に5件だったが、19年には21件と増加傾向にある。

 営業秘密の問題に詳しい林いづみ弁護士は「インターネットの技術革新に伴い、営業秘密の窃取とともに、そのデータを消す証拠隠滅も簡単になり、企業情報の流出をめぐる事案は増えている」と指摘する。

 営業秘密は競争を勝ち抜くために企業が蓄積した知識や努力のたまもので、漏洩は重大な犯罪だが、「情報を管理する側も持ち出す側も意識は低い」とある警視庁幹部。「摘発することで警鐘を鳴らしたい」と話した。

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