主張

NHKの値下げ 組織統治の改革を怠るな

 NHKが令和3~5年度の次期経営計画を発表し、受信料値下げの方針を明らかにした。

 値下げは当然としても安定した受信料収入にあぐらをかいたコスト意識の甘さを見直し、組織統治の改革を断行してもらいたい。

 受信料収入は年間約7千億円に上る。値下げの原資は、事業規模の約1割にあたる700億円程度を確保する。

 財政安定化のための繰越金(剰余金)が2年度末に1450億円に上る見通しで、これを取り崩すほか、業務コストや新放送センター建設費の削減などで捻出する仕組みだ。

 値下げは5年度に実施するが、具体的な下げ幅などは、受信料の徴収状況など今後を見て詰めるという。新型コロナウイルス禍など先行きが不透明な事情はあろうが、公共放送としての性格から、多額の繰越金をため込む必要はない。視聴者への還元に腰が重かったと言わざるを得ない。

 別々に徴収している地上波と衛星放送(BS)を統合した総合的な料金制度の検討も、経営計画に盛り込まれた。適正な受信料について結論を得ることは急務だ。

 BS1とBSプレミアムの統合やラジオ波の削減も示された。業務効率化を進めるとしても、視聴者本位で編成などを工夫してもらいたい。

 昨年8月に公表した経営計画案をめぐっては、昨年からインターネット同時配信を始めるなど業務肥大化に対する懸念が指摘されていた。総務省などからは、受信料の値下げや、公共放送としての適正な事業規模を求める意見が出ていた。

 経営計画は、「スリムで強靱(きょうじん)な『新しいNHK』」を目指すと、うたった。そのためにも、関連会社を含めた組織肥大化の見直しなど改革が欠かせない。

 最高裁は平成29年、「公共の福祉」をかなえるNHKの放送目的を重視し、受信料制度を合憲とした。しかし視聴者から集めたカネを使い放題というのでは公共放送の名に値しない。

 NHKは受信料に甘え、あるだけ予算を使ってしまうコスト意識の欠如が批判されてきた。その緩みのままでは、受信料値下げも一時的なものとなってしまう。

 外部から会長が起用され、改革は途上であることを忘れてもらっては困る。

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