2021 成長への展望

アキレス社長・伊藤守さん プラスチック加工で災害対策に貢献

 --昨年1年間を振り返ると

 「シューズ事業が新型コロナウイルスで大きな影響を受けた。50%を占める『瞬足』など子供靴は新入学や運動会などを控える春先が需要期で、主に中国で生産している。2月に武漢で感染が広がり生産ラインはストップし、4、5月は日本で緊急事態宣言があり、売り場を失った。プラスチック事業も自動車向け内装材などが落ち込み、今期(2021年3月期)の上半期は前年同期から15%ほど売り上げが落ちた」

 --コロナ禍で事業面の変化は

 「当社はシューズの会社というイメージが強い。ただ、売り上げの14%しかなく、さまざまな分野のプラスチック加工製品を手掛けている。その意味でコロナ禍によって当社の製品が大きく見直された面もある。良い例がコンビニエンスストアのレジ前に取り付けられる透明な飛沫(ひまつ)防止用フィルムだ。17年に15分でウイルスを99.99%死滅させる抗ウイルスフィルムとして開発した。これまで鳴かず飛ばずだったが、昨年の4、5月以降は在庫はなくなり、生産が追い付かなくなった。『医療用エアーテント』も医療機関が院内感染を防ぐために発熱外来用施設に利用された。事業としてはともに小さいものの、社会的に貢献できたと社内のモチベーション(動機付け)を高めることにつながった」

 --21年の展望は

 「足元の新型コロナの感染状況を踏まえると、来期の売上高は楽観視できない。シューズは春先に昨年のような状況を繰り返す可能性もある。事業としては災害対策ビジネスに改めて注力する。ここ数年の水害で救助用に使われたゴムボートなどでアキレスのロゴが広まったし、当社の製品が災害時に貢献できると感じた。エアーテントも災害時の避難用など感染対策以外にも多用途に使える。ウィズコロナ、アフターコロナも見据え『抗ウイルス』をキーワードとした製品は恒常的需要があり、プラスチック加工専門メーカーとして社会的課題を解決する新しい製品を提案していく」

 --既存事業の強化は

 「中国広東省で50億円を投じて車両内装向け資材の新工場を建設している。現地の日系自動車メーカー向けに供給する。鉄道、航空機向けも視野に入れた将来をにらんだ投資だ。シューズ事業の立て直しも課題でミッドソールに自社開発の新ポリウレタン素材『ACROFOAM(アクロフォーム)』を採用したランニングシューズを投入するなど、素材力を生かしながら商品力を上げることにトライする」

【プロフィル】伊藤守 いとう・まもる 1979年東工大院修了。興国化学工業(現アキレス)入社。2004年取締役、10年専務。12年6月から現職。山形県出身。

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