2021 成長への展望

リコー社長・山下良則さん カンパニー制で顧客価値を引き上げ

 --新型コロナウイルス禍の昨年の経済状況をどうみているか

 「人が動くことで社会が発展してきたということを改めて実感したが、オフィスでのプリントも大きな影響を受け、『オフィスに出ること=仕事』という概念が強制的に壊された。紙のプリントが必須な仕事と心配だからプリントしていた仕事が明確になり、電子データ化が進んだ。中期経営計画で4、5年先に考えていた状況が一気に来た感じだ」

 --ある程度準備はできていたのか

 「事業では中小企業、地方を中心にオフィスサービスのサポートをしてきたことが功を奏したが、もう少しスピードを上げておかなければいけなかった。昨年11月に今年度の最終損益見通しを下方修正している。もうコロナを言い訳にした下方修正はしない覚悟だ」

 --社員の働き方も見直したのか

 「10月から新たな働き方のガイドラインを『マイノーマル』と名付け、在宅やサテライトオフィスでの勤務の申請を不要にするなど社員それぞれの働き方の選択肢を増やした」

 --今年は新たな中計が始まる

 「4月からカンパニー制を導入するので、だいぶ準備が進んでいる。各事業の開示内容も分かりやすくなるし、プリンティング以外の車載などの事業も収益性を考えながら投資できるようになる。もともと2023年度からの中計でカンパニー制を導入するつもりだったが、コロナ影響でプリンティングの需要も下がってきており、2年前倒しすることにした。カンパニー長に権限を相当委譲し、顧客価値を上げていく」

 --コロナでペーパーレス化の流れは加速している

 「北欧ではデジタルガバメントが一気に進んで、民間のプリンティングも以前からだいぶ減っていたが、日本は逆に増えているのではないかという状況だった。そこにコロナが来て相当減った。コロナ後も元の水準までは戻らないだろう。どのくらいになるかを想定し、それに応じた体制をいかに早く整えるかの勝負になる。業界のあり方が変わるのではないか」

 --政府のデジタル庁創設の動きは追い風になるか

 「規制改革とIT化の動きは評価するが、忘れてはいけないのが地方自治体だ。民間と連携しながら短期間で対応した方がいい。IT機器を導入すると、どう使うかが大事になるので、ソフトや保守なども必要になる。地方でリコーほど細かく対応できる企業はない。ラストワンマイルを大事にしてきたことが、ここに来て自治体から頼られる結果になってきている」

【プロフィル】山下良則 やました・よしのり 広島大工卒。1980年リコー入社。総合経営企画室長、専務、ビジネスソリューションズ事業本部長、副社長などを歴任し、2017年から現職。兵庫県出身。

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