2021 成長への展望

花王社長・長谷部佳宏さん メリハリつけ勝負どころでは大胆に

 --1月1日付で社長に就任した

 「就任決定は昨年1月末に知らされていて、就任まで11カ月ほどあった。次の経営を考えさせてもらえる時間が長かったという意味で感謝している」

 --就任と同時に始動した5カ年の新中期経営計画では、抗ウイルス技術や免疫強化といったライフケア事業の強化をうたっている

 「社長就任前に研究統括としてライフケア新事業の準備にかかわってきた。5年程度をかけて蓄積したノウハウや技術を生かしたい。自社にこだわらず、協力してきたさまざまな企業と引き続き連携する」

 --新型コロナウイルスの感染拡大で、ハンドソープなど衛生用品の販売が伸びている

 「良い点ばかりではない。コロナ禍は基本的には消費や家計に打撃を与える。衛生用品が売れているといっても、各家庭に行き渡ればだんだん消費量は減っていく。中長期的に見れば、日本は人口減で市場が縮小する可能性もある」

 --薄利多売との決別を説いている

 「花王は多くの消費財を提供する一方、多くのエネルギーを消費し、廃棄物を生み出している。大量に捨てられるものを作っている会社はやがて淘汰(とうた)される。大量消費の時代は終わりを告げ、より少ない量や、長く使えるものに価値を見いだす時代に変わりつつある。花王もそういうモノづくりを目指すべきだ。たとえ(販売)量が減っても、価格を上げて売る仕組みを構築すればいい」

 --化粧品事業はコロナ禍の打撃が大きい

 「実は、最も楽しみな事業が化粧品だ。一昨年まではわりと調子が良く、業績も上向いていた。ブランドを絞り込み、個性を大事にしたからだ。その方向性自体は間違っていない。直近はメーキャップ商品の売り上げが落ち込んでいるが、コロナ禍が去れば(反動で)爆発的に売れるのではないか。その時が勝負だ」

 --海外売上高の拡大が課題だ

 「従来のやり方が間違っていたのは、自社ブランド、それもヘアケアなどの既存分野で事業を拡大しようとした点だ。今後は自社ブランドにはこだわらず、ライフケア事業で(収益を)増やしていく」

 --花王の強みは

 「多くの商品を手掛けるからこそ、生活者のことを多角的な視点で考えられる点にある。多角化に似た効果で経営も安定している。その半面、業績が大きく伸びにくい面がある。今後は投資などでメリハリをつけ、勝負どころでは大胆に攻める」

【プロフィル】長谷部佳宏 はせべ・よしひろ 東京理科大大学院博士課程修了。1990年花王入社。取締役専務執行役員などを経て、2021年1月から現職。宮城県出身。

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