2021 成長への展望

東芝社長・車谷暢昭さん 量子暗号技術で世界標準獲得目指す

 --新型コロナウイルス禍の昨年をどう振り返るか

 「歴史に刻まれる年になった。もともと世界は再生エネルギーのグリーン、デジタル、国土強靭(きょうじん)化のレジリエンスの3テーマで大きく動いていく底流があったが、コロナがそれを一気に表に出し、加速させた」

 --その中で東芝はどう動いたか

 「私が東芝に来て1年半くらいでレガシーアセット(負の遺産)を切り離し、事業ポートフォリオ(組み合わせ)の見直しもほぼ処理できた。実力ベースの持ち上げがかなり順調に進み、成果のあった年だった」

 --東京証券取引所第1部への復帰を申請している

 「1部への復帰は株価だけでなく再建を進める当社グループにとって大きな意味合いがある。(東証の)審査結果を待つということに尽きる」

 --株式の約40%を保有する半導体大手キオクシアホールディングスの新規上場が昨年9月に延期された

 「延期の方針が変わったとは聞いていないので、どこかで上場されるだろう。われわれは方針にのっとり、新規上場の際のキオクシア株の一部売却を行う」

 --今年の事業の見通しは

 「2019年度からの中期経営計画『ネクストプラン』の仮締めの年になるので、しっかり実績を出したい。大きいのはコロナ影響だが、当初想定していたような営業利益(本業のもうけ)を出せるよう頑張る」

 --ネクストプランの目標達成のポイントは

 「まずは固定費削減など基礎収益力の向上をしっかりやり切ることが非常に重要だ。その確固たる基盤の上にインフラサービスといった成長事業を載せる。1個ずつ厳密に投資の判断をしながら伸ばしていく」

 --中期的に期待する成長事業は

 「レジのPOS(販売時点情報管理)システムではわれわれが世界的なプラットフォーマーになっており、顧客データを使用できる体制を早く築くことが大事だ。多くの企業が、顧客の承諾を得た上で、こうしたデータを使いたいだろうし、(東芝にとっても)大きな企業価値を生み出す可能性がある」

 --量子暗号技術は世界的に注目を集めている

 「技術面では圧倒的に東芝が世界トップなので、これをグローバル標準となるよう動きたい。社会実装を計画している政府や企業としっかり手を結んでいく」

 --脱炭素化への対応は

 「今後30年くらい続く巨大な流れで、これは止まらないだろう。関連技術はたくさんあるので、社会実装する中で大きく貢献できる。デジタルと並ぶ大きなテーマとして取り組んでいきたい」

【プロフィル】車谷暢昭 くるまたに・のぶあき 東大経卒。1980年三井銀行入行。三井住友銀行副頭取、英投資ファンド日本法人会長などを経て、2018年東芝会長。20年4月から現職。愛媛県出身。

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