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コロナ禍でも格別、米のビッグゲーム

 毎年、米国では2月の第1日曜日に開催されるスポーツイベントに注目が集まる。1つはPGAツアーのフェニックスオープン。松山英樹選手の連覇で日本でもおなじみだが、1週間のギャラリー数が70万人を超える世界でも屈指の集客力を誇るゴルフトーナメントである。圧巻は2万人収容の特設スタジアムに囲まれた16番ショートホールだ。大会期間中、近隣のサッカーコート10面からなるスポーツ・コンプレックス(複合競技施設)は巨大駐車場に変貌する。(帝京大学教授・川上祐司)

 史上最高の試合を

 しかし、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の中での今大会は、入場を1日5000人に制限したものの、他のPGAツアーとは異なり選手関係者以外にファンにも許可した。16番ホールには今年もスタジアムがそびえ立つ。約3カ月かけて建設されたこのスタジアムは例年通り2カ月かけて取り壊す。そこには多くの地元労働者たちが従事する。同ツアーは人口26万人のアリゾナ州スコッツデール市のパブリックゴルフ場「TPCスコッツデール」で開催され、NPO団体「サンダーバード」によって運営されている。

 もう1つはNFL(ナショナル・フットボールリーグ)の頂点を決めるスーパーボウル。今回は史上初となる開催地をホームとするチーム、タンパベイ・バッカニアーズが昨年チャンピオンのカンザスシティー・チーフスを下して18年ぶり2度目の制覇を果たした。

 チケット平均価格は8613ドル(約90万8800円)と過去5年間平均の5506ドルを大きく上回る。入場者数を収容人数約30%の2万5000人に制限して、さらにこのうち7500人をNFL32チームの都市から予防接種を受けた医療従事者たちを招待した。「異常で困難な状況下であっても史上最高のスーパーボウルを開催する」とした人口40万人のタンパ市長の発言通り、パンデミックの中でのスーパーボウルも格別であった。

 セレモニーでは、ボランティアや慈善活動とフィールドでの卓越性をたたえる「ウォルター・ペイトン・マン・オブ・ザ・イヤー賞」にラッセル・ウィルソン選手(シアトル・シーホークス)が表彰を受ける。同選手は年俸2位のスタープレーヤーである。フィールドではスーパーボウル女性初の審判、サラ・トーマンさんがサイドラインジャッジとして笛を吹く。

 またバッカニアーズでは2人の女性アシスタントコーチが指揮を執る。一方で企業の趣向を凝らした内容が話題となるテレビ広告は見合わせが相次いだ。「バドワイザー」がテレビ広告を流さないのは37年ぶり。予定していた広告費を新型コロナワクチン接種の啓蒙(けいもう)活動に寄付するという。「バーやレストランの営業が回復するための支援」には広告以上の効果があったのではないか。スポーツスポンサーシップの目的はメディアバリューだけではない。

 社会的課題解決へ道

 この2つのスポーツイベントは毎年開催地に3億ドルから5億ドルの経済効果をもたらすが、コロナ禍の影響によりその見込みは大きく下回る。しかし、これらのスポーツイベントを通じた恩恵が社会的課題解決への期待と希望を広げる。スポーツ先進国を象徴するスポーツがパンデミックの中でも機能していた。

 日本では、相変わらず長老たちが既得権益に固執するような時代錯誤の発言が続いている。「官」の旗振りも、自らブレーキをかけながら、いつしか異次元へ進ませている。プロスポーツイベントはアスリートだけのものではない。コロナ禍を機にその成果を「質」として捉えることができるか。まもなく開幕を迎える日本のプロスポーツリーグと地方クラブのイノベーションに期待したい。

【プロフィル】川上祐司

 かわかみ・ゆうじ 日体大卒。筑波大大学院修士課程スポーツシステム・健康マネジメント専攻修了。元アメリカンフットボール選手でオンワード時代に日本選手権(ライスボウル)優勝。富士通、筑波大大学院非常勤講師などを経て、2015年から帝京大経済学部でスポーツマネジメントに関する教鞭(きょうべん)を執っている。著書に『アメリカのスポーツ現場に学ぶマーケティング戦略-ファン・チーム・行政が生み出すスポーツ文化とビジネス』(晃洋書房)など。55歳。大阪府出身。

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