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三菱電機の「偽の宣言書」に自動車メーカー幹部が大激怒しているワケ (1/2ページ)

 適合しない製品と知りながら自動車メーカーに出荷

 三菱電機の「車載ラジオ」の品質不正問題が、国内の自動車メーカー幹部を激怒させている。

 今回、不正の対象となったのは、車載オーディオ機器用ラジオ受信機、いわゆる「車載ラジオ」だ。自動車メーカーが欧州市場で販売する車に搭載する製品で、EUの基準に適合しない製品を、それと知りながら顧客である自動車メーカーに出荷し続けていた。不適合品の出荷台数は30万台を超える。

 三菱電機がこの問題を公表したのは2020年11月。12月に社内調査の結果を発表し、EUの基準を満たさないオーディオを2017年6月から3年4カ月にわたり自動車メーカーに出荷していた。

 同社はこの製品について、欧州でのAMラジオ受信時に音声にノイズが混入する可能性はあるが安全性には影響はないとしている。2月の決算説明会でも三菱電機の皮籠石斉常務執行役は、「心配をかけて申し訳ない」としつつも「現時点では業績に影響が出るような状況ではない」と語った。

 不適合品と知りながら問題製品の生産・出荷を継続

 しかし、法令に基づくリコールや罰金の対象になる可能性がある。自動車メーカーが自主的にリコールし、賠償金を求められるケースも想定される。もし、不適合品がすべてリコールされた場合、単純計算で賠償額は100億円を超えるとの見方もある。

 日本の自動車各社が、同社を特に悪質だと指摘するのが、発覚を恐れて偽装・隠蔽工作をしていたからだ。顧客である自動車メーカーにたいしてEUの規格に合う「偽の適合宣言書」を提出したうえ、「改造品」を使って適合性評価試験を受審。さらに、不適合品と知りながら問題製品の生産・出荷を継続した一連の行為はきわめて悪質だ。

 2014~19年に過労自殺などで社員6人が労災認定

 三菱電機の自動車部品事業の売上高は1兆円前後とみられる。脱炭素の世界的流れの中で、昨年6月には、電気自動車(EV)などで電力を効率よく制御するパワー半導体の工場を200億円かけて新設すると発表。ライバルの富士電機や東芝なども設備増強する中、今回の問題で受注を逃せば影響は小さくない。

 今回の品質不正の発覚以外にも経営を揺るがす問題を三菱電機は起こしている。パワーハラスメントによる相次ぐ社員の自殺だ。

 三菱電機ではグループ全体で2014~2019年に、過労を原因とした自殺などで男性社員6人が相次いで労災認定を受けた。また2019年8月には教育主任から暴言を受けていたとみられる新入社員の自殺も発生した。

 この反省から会社側が再発防止策として「風通しよくコミュニケーションができる職場づくり」や「メンタルヘルス不調者への適切なケアの徹底」等を目指し、「三菱電機 職場風土改革プログラム」を今年1月に公表した。「特にパワーハラスメント行為を絶対に許さない職場づくりに注力します」として、ハラスメント研修の受講対象を全社員に広げるほか、相談窓口の充実などを進めている。

 「経営の最優先課題とし、こうした問題が再び起きないように取り組んでいく」(広報担当者)としているが、市場は冷ややかな目で見ている。

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