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米航空は「レジャー路線」に軸足 出張激減、生き残り懸け運航見直し

 新型コロナウイルス禍で苦境にあえぐ米航空各社が、生き残りを懸け路線網の見直しを急いでいる。

 航空専門の調査会社、英シリウムによると、新型コロナ感染拡大から1年以上が経過した現在でも、世界で民間の航空機材の約30%が待機状態にある。国際航空運送協会(IATA)の新たな推計では航空需要の回復は以前の予想よりも遅れる見通しだ。IATAは当初、今年の航空需要が前年比50%増えるとの予想を示していたが、現在は最悪の場合で13%の増加にとどまると試算している。

 早くも復活の兆し

 こうした中、航空会社は簡潔にいえば、ビジネス旅行路線の運航を減らす代わりに、成長路線であるレジャー向け路線に軸足を移している。

 レジャー旅行の需要は特に夏季や連休中に急増するなど、早くも復活の兆しを見せている。一方、ビジネス渡航需要は恒久的に戻らない可能性があり、ビル・ゲイツ氏ら著名な識者はテレビ会議システムの普及により、新型コロナ後も出張需要の約5割が戻らないとの見方を示した。旅行業界専門の米調査会社アトモスフィア・リサーチ・グループの創業者、ヘンリー・ハーテベルト氏は「現状に鑑み、航空会社は大都市同士を結ぶビジネス路線から、温暖な気候に恵まれたレジャー路線に重心を移している」と指摘する。

 例えば、ユナイテッド航空、デルタ航空、アメリカン航空はいずれもニューヨーク、サンフランシスコ、ワシントンといった米国の大都市からロンドンに向かう便を削減。米国のハブ(拠点)空港とフランクフルト、東京、シドニー、サンパウロなどの主要ビジネス都市を結ぶ直行便も減らした。

 一方、ボストンやクリーブランド、ミルウォーキーなど主要都市に次ぐ規模の都市である「セカンダリー・シティー」を発着する直行便を以前よりも増やす方針だ。最近需要が急増している米フロリダ州のフォートローダーデールやフォートマイヤーズ、オーランドなど温暖な都市はとくにアクセスが改善される見通しだ。

 これにより旅行者の乗り継ぎは減る。新型コロナ感染拡大以前、大都市のハブ空港を中心に放射状に張り巡らされた「ハブ&スポーク」型のネットワークに対し、中規模都市同士を一対一で結ぶ「ポイント・ツー・ポイント」型は収益性が低かった。しかし、高級旅行会社スカイラークのポール・タンポウスキー最高経営責任者(CEO)によると、最近では乗り継ぎが特に複雑化しているため、利便性が重視されるようになったという。

 ディアスポラ需要

 もっとも、長距離のレジャー市場については、検疫からワクチンパスポートに至る入国条件により、国境の再開後も需要の低迷が続くと予想される。ユナイテッドは新型コロナの流行以前、米国から中国の成都、イタリアのナポリ、ポルトガルのポルトなどへの直行便を運航していたが、同社の国際ネットワーク・アライアンス担当バイスプレジデント、パトリック・クエール氏は「これらの便がすぐに再開するとは考えない方がよい」と話す。

 半面、長距離国際路線での明るい話題もある。米国の移民が母国の親族との再会を求める「ディアスポラ旅行」と呼ばれる旅行の需要が拡大しており、コロナ禍と収束後の双方で予約数の増加に貢献するとみられているためだ。

 ユナイテッドは5月に拠点空港であるワシントン・ダレスとアクラ(ガーナ)、ラゴス(ナイジェリア)を結ぶ直行便を新設するほか、6月にはサンフランシスコ-ベンガルール(バンガロール)間の路線も開設する計画だ。アメリカンも5月からニューヨーク-テルアビブ(イスラエル)線の運航を開始する。

 こうした動きは米国以外にも広がり、カタール航空もドーハ(カタール)とサンフランシスコ、シアトルを結ぶ新路線を開設した。同社の広報担当者は「路線網の再構築はコロナ禍に母国へ帰ろうとするディアスポラ旅行の需要の高まりを受けたものだ。これらの需要は航空会社に新たな門戸を開く可能性がある」と指摘した。(ブルームバーグ Eric Rosen)

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