金融

米金融プロ、経験強みに移籍進む フィンテック・運用に報酬3倍も提示

 金融とハイテクを融合したフィンテックの新興企業や資産運用会社は、経験豊富な米金融業界のプロたちに、今の勤め先の何倍にもなる報酬を含め、特別に魅力的な転職機会を提示している。銀行が2020年のボーナスの支給増額を抑制したことから、報酬増は一層魅力的だ。賞与支払いシーズンが終わった今、移籍は増えている。

 消費者向け知見貴重

 ゴールドマン・サックスのパートナー2人が小売企業ウォルマートのフィンテックベンチャーに移ったのが好例だ。その翌日にはもう一人のゴールドマン幹部がヘッジファンドのタイガー・グローバル・マネジメントに移ると伝えられた。

 米小売り大手ウォルマートは金融機関ではないが、十分なリソースを持ってゼロから新しいものを作り上げ、既存のプレーヤーに挑戦できる機会は魅力的だ。もちろん、新事業で成功すれば巨万の富も手に入る。

 CTBCバンクUSAのノア・メナイ最高経営責任者(CEO)は「こういう人々は非常にやる気があり、極めて頭が良く、自分で目標を設定する。『私はこれを作った、今度は別のものを作らなければ』といった具合だ」と話した。

 フィンテックは今、熱い分野だ。ベンチャーキャピタル会社が新興企業に資金を注ぎ込み、仮想通貨や決済、金融アドバイス、手数料無料のトレーディングなどの事業が勢いに乗りつつある。

 金融サービスに参入する企業は経験のある人材を必要とする。一般的な投資銀行業務や経営コンサルティングはそれほどでもないが、消費者保護や融資リスクなど複雑で堅苦しい消費者向け銀行業務の詳細を理解している人材は貴重だ。

 大手銀行で1000万~1500万ドル(約10億9140万~16億3710万円)を稼ぐ部門責任者は新しい会社のトップになればその2~3倍を得られるし、将来的にはさらに上積みも見込めると、ある上級幹部が見積もった。

 ウォルマートのフィンテックベンチャーに移ったゴールドマンのオマール・イスマイル氏とその右腕のデービッド・スターク氏は、同社の個人向け事業進出を担い最近昇進を重ねていた。イスマイル氏はゴールドマンを去るつもりはなかっただろうが、大きな影響を与えるような仕事をする機会が訪れたということだ。

 報酬の魅力は二の次

 資産運用会社への移籍は古くからある現象だが、今年はベテラン運用者らが強気相場の中で稼いだ資金を再投資する後継人材を求めており、加速が見込まれる。

 1日にはゴールドマンの資産運用事業の共同責任者を務めてきたエリック・レーン氏が退社し、チェース・コールマン氏率いるヘッジファンド運用会社、タイガー・グローバル・マネジメントに移籍することが分かった。

 ウォール街の銀行は昨年の好業績にもかかわらず、株主リターンを高めるためコスト圧縮を迫られた。報酬抑制は大手銀行の利益改善に寄与し、株価がここ数週間で最高値を更新したところもある。

 転職すれば、当初のパッケージは直ちに報酬増につながるし、ベンチャーが成功すれば将来は比べものにならない利益を手にできるかもしれない。

 しかし、金融からフィンテックへと移る第一の原動力は報酬ではないと、幹部人材斡旋(あっせん)会社トゥルー・サーチで両分野を担当するパートナーのジョン・ポメランツ氏は話す。「世界中の何十億人もの消費者に知られるブランドとつながる機会、従来とは違う金融サービス会社を作り上げられる組織に加わる機会が原動力だ」と同氏は語った。(ブルームバーグ Anders Melin)

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