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あす25日開始、聖火リレーに託す小さな希望

 東京五輪・パラリンピックの聖火リレーが25日、スタートする。福島・楢葉町と広野町に広がるサッカー施設、Jヴィレッジから121日間かけて国立競技場まで運ばれる。昨年3月12日、ギリシャのオリンピアで採火され、20日に日本に到着した。しかし、新型コロナウイルス感染のパンデミック(世界的大流行)により、大会は史上初の1年延期。出発の地、福島に留め置かれてきた。(尚美学園大学教授・佐野慎輔)

 聖火リレーの開始は、東京大会の“開幕”を意味する。「さあ、いよいよ」と希望に満ちてリレーを待ちたいところだが、収束の糸口さえみえないコロナ禍がそれを拒む。

 経済再生見通せず

 聖火が巡る47都道府県859市町村では、それぞれ魅力を発信しようと場所を選び、イベントも用意した。だがクラスター(感染者集団)の発生を防ぐべく規模は縮小、沿道での観覧も控えねばならない。

 「情報発信はインターネットで」と大会組織委員会は呼び掛けるが、盛り上がりは期待できそうもない。

 地方は首都圏と比べて感染者の拡大は抑えられている。それでも長く続くコロナ禍が経済を冷え込ませる。島根県の丸山達也知事が発した「県内のリレー中止」に、いまだ明確な答えも出ていない。

 この1年、東京大会は「中止だ」「延期だ」と揺れた。1年延期を決めた安倍晋三首相が体調不良を理由に退陣し、発足以来、組織委員会を率いた森喜朗会長もジェンダー平等に関わる舌禍で退いた。橋本聖子五輪相が横滑りする形で後継会長となり、再出発した矢先、式典統括責任者の佐々木宏氏による女性タレントを侮辱した発言が表面化。世論の批判を浴びるとともに、グループLINEの流出で組織ガバナンス(統治)の不安を露呈した。

 先週末、正式に海外観客の受け入れ見送りが決まった。1896年以来、中止した夏・冬5大会を除けば初めて。インバウンドによる経済再生というもくろみは吹っ飛んだ。昨年のインバウンド数は前年比87%減の411万人。今年は見通しもたたない。

 動画配信で魅力発信

 頼みの国内観客は4月に入場者の上限を決める。プロ野球やJリーグなどと同様、収容人員の50%とするのか、下回るか。いずれにせよ、約900億円を見込んだチケット収入は大幅縮小、予算計画は見直しとなる。

 関西大学の宮本勝浩名誉教授による試算では、感染者が日本在住者限定、さらに入場者を収容人員の半数に制限した場合、経済的損失は約1兆6258億円になるという。

 「無観客」の是非を決めるのはもう少し先、コロナの状況次第だ。問題はスポンサー企業の招待客。海外からの客も含め、4月にどう対処するか決める。

 怖いのは、2019年3188万人を記録したインバウンド客への影響である。これがきっかけで日本離れにつながりかねない危機を迎えている。

 せめて大会が盛り上がれば、テレビ映像やインターネットの動画配信を通して、日本の魅力を発信することもできよう。そうした意味では、全国を巡る聖火は小さな灯だが、希望の灯でもある。

【プロフィル】佐野慎輔 さの・しんすけ 1954年富山県高岡市生まれ。早大卒。サンケイスポーツ代表、産経新聞編集局次長兼運動部長などを経て産経新聞客員論説委員。笹川スポーツ財団理事・上席特別研究員、日本オリンピックアカデミー理事、早大および立教大兼任講師などを務める。専門はスポーツメディア論、スポーツ政策とスポーツ史。著書に『嘉納治五郎』『中村裕』『スポーツと地方創生』(共著)など多数。

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