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コロナ禍、変わる陸上競技支援の形

 尚美学園大学教授・佐野慎輔

 物憂い春である。新型コロナウイルス感染は再び全国で拡大傾向にある。聖火リレーは始まったが、2020東京五輪・パラリンピックへの機運は依然、盛り上がらない。

 「びわ湖」「福岡」終了

 マラソン好きには寂しい春でもあった。2月末、「びわ湖毎日マラソン」が第76回大会をもって幕を下ろした。3月20日には「福岡国際マラソン」が今年12月5日の第75回大会を最後に終了すると発表された。

 「びわ湖」は1946年「全日本毎日マラソン選手権」として誕生、翌47年に日本初の五輪マラソン代表、金栗四三を記念した「金栗賞朝日マラソン」として創設の「福岡」とともに数多の名ランナーを輩出。日本マラソン界を牽引(けんいん)してきた。

 近年、マラソンは「高速化」と「市民参加による大規模化」とが世界的な潮流である。記録の出やすい大会が増加、両大会ではトップランナーが出場を回避する事態も起きていた。

 一方、交通事情などもあって大規模市民マラソン移行は難しく、勢い話題性を欠いてスポンサー集めも厳しい状態にあった。

 「びわ湖」は2022年から大阪市内を走る「大阪マラソン」に統合、吸収される。最後の大会で鈴木健吾選手(富士通)が2時間4分56秒の日本新記録を樹立したのは何とも皮肉だ。

 「高速化」は、企業の支援のあり方も変えた。チームとしての支援からの変化である。

 3月末、日清食品グループ陸上競技部が活動を休止した。19年に駅伝からの撤退を表明、佐藤悠基選手らわずかな人数に絞って活動。東京2020大会マラソン代表選考レース後、佐藤選手がSGホールディングスに移籍し、村沢明伸選手らの移籍も決まり休止となった。

 日産自動車やエスビー食品など、合理化の一環で競技支援から撤退した企業もあった。日清食品のホームページには「(1995年)発足当時とはさまざまな環境が変化しており、企業スポーツの在り方について多面的に検討しました結果」だとある。同社は東京2020大会公式スポンサー、小学生の全国陸上競技大会も支援し、プロテニスの大坂なおみ、錦織圭両選手とはスポンサー契約を結ぶ。「世界」と「子供」に絞った支援は、宣伝効果と未来社会を念頭にした戦略転換にほかならない。

 「世界」か、「未来」か

 昨年秋、DeNA陸上競技部が解散した。廃部したエスビー食品を受け継ぎ、日本陸上界のレジェンド瀬古利彦氏をエグゼクティブアドバイザーに13年創部。18年に駅伝から撤退しトラック、マラソン選手に絞って支援していた。解散後も瀬古氏は残り、1500メートルの第一人者・舘沢亨次選手への支援を継続。小中学生育成のためのアカデミー事業も今月1日から横浜DeNAベイスターズが運営して、「人とまちを元気にする」事業として続けられる。

 佐川急便グループを背景に、SGホールディングスのように駅伝に力をいれる企業もある。だがコロナ禍の折、撤退を模索する企業が増え、「世界を目指すトップ選手」と「未来のための人材育成」とに支援を絞る企業も出てこよう。東京2020大会後、企業をめぐるスポーツ環境の変化が気にかかる。

【プロフィル】佐野慎輔

 さの・しんすけ 1954年富山県高岡市生まれ。早大卒。サンケイスポーツ代表、産経新聞編集局次長兼運動部長などを経て産経新聞客員論説委員。笹川スポーツ財団理事・上席特別研究員、日本オリンピックアカデミー理事、早大非常勤講師などを務める。専門はスポーツメディア論、スポーツ政策とスポーツ史。共著には『これからのスポーツガバナンス』(創文企画)、『スポーツフロンティアからのメッセージ』(大修館書店)など多数。

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