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外資ファンドによる日本企業への買収提案 安保関連技術、海外流出の懸念

 英投資ファンドなどから買収提案を受けた東芝。不正会計問題や米原発事業をめぐる巨額損失からの経営再建過程で多数のアクティビスト(物言う株主)に大規模増資を引き受けてもらった結果、その対応に悩まされ続けてきたが、今回の提案は経営安定化に向けて“渡りに船”ともいえる。ただ、東芝が扱う安全保障関連技術の海外流出の懸念などもあり、実現へのハードルは高い。

 「まだ結論出せない」

 東芝は7日、取締役会を開き、買収提案について協議。「まだ結論を出せる状況ではない」(同社関係者)というが、CVCはすかいらーくのMBO(経営陣による自社買収)に携わったほか、資生堂の日用品部門の買収も行うなど日本企業の再生に一定の実績があり、社内外で期待する声が出ている。車谷暢昭社長がCVCの日本法人会長を務めていたことも、こうした見方を後押しする。

 東芝をめぐっては2017年末、経営危機で負債が資産を上回る債務超過を回避するために6000億円の大規模増資を実施し、海外の複数の投資ファンドが引受先となった経緯がある。積極的に経営に口を出すアクティビストも多く、その後、東芝は市場に流通する株式数を減らし1株当たりの価値を高める自社株買いなどの株主還元を何度も余儀なくされた。対立は常態化し、今年3月の臨時株主総会では、昨年7月の株主総会の運営に問題があったとして第三者による調査を求める投資ファンドの株主提案が可決されるまで発展した。

 改正外為法の対象

 CVCの買収により株式が非公開になれば、アクティビスト対応で体力を消耗することもなくなり、大型投資など機動的な経営判断がしやすくなる。東芝には悪くない提案だが、一方で外部の株主による監視が行き届かなくなる危険性もある。昨年の株主総会で車谷氏の取締役再任の賛成率が57.96%にとどまったのは、三井住友銀行出身の車谷氏の経営方針に一定の歯止めをかけたい一般株主の声も反映されたものとみられている。

 さらに東芝1社の問題で終わらないのが、外国人投資家による国内上場企業への出資規制を強化する改正外為法との関係だ。東芝は防衛や原発、電力など国の安全保障に関わる事業を多数抱えており、これらの先端技術や機密情報が海外流出しないよう改正外為法で重点審査の対象となっている。経済産業省や財務省の事前審査をパスすることが必要となる。

 改正外為法は、安全保障上重要な12分野を指定し、資産運用目的を除き、投資家が1%以上の株式を取得する際に国への事前届け出を求める。改正前は出資比率が10%以上だったが、国境を越える企業買収が増加する中、外資規制を強める欧米各国と歩調を合わせて厳格化。事前届け出が必要な上場企業リストには東芝も含まれている。

 日本商工会議所の三村明夫会頭は7日の記者会見で「世界中がカネ余りの状況で、日本企業は海外から買収されやすい環境にある。気を付けるべきだ」と警戒感を示した。

 政府側も今回の買収提案を注視しており、加藤勝信官房長官は7日の記者会見で「一般論として、重要インフラに関わる事業などを実施する日本企業を海外投資家が買収する際には、外為法に基づく手続きが必要になる」と指摘。「わが国の経済社会にとって重要な事業は安定的に継続できる経営体制が構築、維持されることが重要だ」とも述べ、安保関係の事業継続に万全を期すよう求めた。(桑原雄尚)

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