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「“怒”で議員給与2200万円」の野党が、万年野党から抜け出すためのFBIモデル (2/2ページ)

 「自分は正しい。お前は間違っている」は実りのある議論にならない

 欧米には、古代ギリシャの時代に民主主義のツールとして生まれた弁論学・修辞学を源流とする説得術を学んだ政治家が数多くいる。コミュニケーションをサイエンスととらえ、心理学・脳科学・人類学などアカデミックの観点から「いかにして人の心を動かすか」が科学され、解が示されている。

 一方、日本では、コミュニケーションは伝承や職人芸の範疇にあり、教科書も教わる場もないままに、誰もがやみくもに正解のないまま自己流でごまかしている。

 政治家のコミュニケーションもご多聞に漏れず、時代遅れで、自己満足。グローバルのスタンダードとはかけ離れた常識に縛られ、アップデートできていない。例えば、「説得」の技法。まず、大前提として、相手の行動を変え、何らかの成果を生み出そうとするのであれば、怒りに任せて攻撃する道は決して選んではいけない。

 そもそも、コミュニケーション学において、「自分は正しい。お前は間違っている」という主張は全くもって実りのある議論には結びつかない。「相手の間違いを指摘し、自分の正当性を証明できれば、相手はその非を認め、自分の言うことを聞いてくれるはずだ」。上司と部下、親子のコミュニケーションなどにおいても、こうした幻想を持つ人は非常に多い。

 一方的に相手を批判することでかえって相手の気持ちを逆なでし、頑なにするだけであることがほとんどだ。にもかかわらず、人は「論破したい」という気持ちに駆り立てられ、相手の非をあげつらうことに血道を上げてしまいがちだ。

 感情に任せた「シャウト型」「自己主張型」は効力が薄い

 しかし、人の心を動かそうとするのであれば、感情に任せた「シャウト型」「自己主張型」は効力が薄い。筆者は、堂々と自分の意見を言えない自分を変えたい、と通ったハーバードロースクールの「ネゴシエーションプログラム」で、このことをさんざん教えられた。

 例えば、「人質解放」を例にとろう。日本であれば、警察が籠城する家を取り囲み、犯人に向かって「お前は包囲されている。出てきなさい」とシャウトするシーンが思い出されるが、科学的にはこれはリスクが高い。犯人が激高したり、絶望し人質を道連れにしたりする可能性があるからだ。

 野党はFBIの科学的な会話手法を学んだほういい

 一方で、アメリカ連邦捜査局FBIによって開発された「行動変容階段モデル」による、人質解放に向けたステップは以下のとおりだ。

 (1)アクティブ・リスニング

 相手の話を聞き、しっかりと聞いているということを相手に理解してもらう。

 (2)共感

 相手の素性や気持ちを理解する。

 (3)相互信頼

 相手から信頼を得る。

 (4)影響

 自分が相手に望む行動を薦める。

 (5)行動変容

 相手が行動を変える。

 多くの国民が、与党に絶望しても、野党も信頼できないと考えるのは、野党が自分たちの話にしっかりと耳を傾け、共感してくれているようには全く感じないからだ。結果、信頼も影響も生まない。

 彼らの話法は、「俺サマはえらい」と自説の正当性だけを主張し、相手を上から目線で否定する毒親か大メディアの論説のようであり、自分に酔い、悦に入っているとしか見えない。

 野党議員は国会議員報酬年約2200万円に見合う仕事をしているか

 国会議員の報酬は月約129万円の歳費と期末手当で年約2200万円。それに見合った働きを望むのは筆者だけではないはずだ。

 本当に、政権を担う気概を持つのであれば、まずは、国民と対話をし、その気持ちを汲み取り、寄り添うことから始めるべきだろう。これはもちろん与党の政治家も同じ。ただやみくもに否定、批判に走るのではなく、建設的な議論の手法を含め、コミュニケーションのイロハを全員、一から叩き込んでいただきたいものである。

 岡本 純子(おかもと・じゅんこ)

 コミュニケーション・ストラテジスト

 グローコム代表。企業やビジネスプロフェッショナルの「コミュ力」強化支援のスペシャリスト。リーダーシップ人材の育成・研修などを手がけるかたわら、オジサン観察も続ける。著書に『世界一孤独な日本のオジサン』(角川新書)などがある。

 (コミュニケーション・ストラテジスト 岡本 純子)(PRESIDENT Online)

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