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「ツタヤとは正反対」なぜアマゾンプライムは“新作無料、旧作有料”なのか (2/3ページ)

 ■「お試し」を入り口にファンが運営を支える

 フリーミアムとは、サービスの一部を最初は無料で経験させ、何らかのプレミアムがほしい場合に料金を支払うというビジネスモデルであり、多くのネットサービスがこのスタイルを踏襲している。

 このフリーミアム型サービスが普及した理由の一つが、ネットサービスでは限界費用が極限まで低くなるという点である。どういうことか。

 例えば、リアルの世界でも試供品などの無料配布で商品を知ってもらう方法があるが、相応のコストがかかってしまう。一方、ネットでは物理的な制約がなく、追加負担なしで無料の「お試し期間」が存続できる。そこから、納得したユーザーが追加物(キャラやカード)を購入(課金)するモデルが広まっていく。これがフリーミアム理論で、オンラインゲームはこの理論に沿ったビジネスを展開している。

 フリーミアムを「ファン」という視点で見ると、「ユーザーがどんどんサービスのファンになるように仕向け、ファンになった時点で有料化する」というスタイルとも言えるだろう。ファンになるまではタダで、ファンになるとお金を払い、ファンが全体を支える。

 実際、オンラインゲームのユーザーに占める課金ユーザーは少ないが、そのようなコアなファンを主な資金源に運営されているのはよく知られている。これがフリーミアム型ビジネス面の大きな特徴だ。

 ■Webコミックはなぜファンが無料なのか

 このようにみれば、Webコミックに見られる「最新話は無料」というやり方も、「無料のオプションが用意されているという点でフリーミアムだ」と理解されるかもしれない。しかし、実はWebコミックはビジネスモデルとしては大きく異なっている。

 Webコミックは最新話が常に無料で提供され、公開から一定期間経つと有料になるが、その代わり最新話がまた無料で読める。これは、常に最新話を追いかけているコアなファンほど、無料をずっと享受できることを意味している。すなわち、これはフリーミアムのように「ファンにお金を払わせる」というビジネスモデルとは正反対の構造なのである。

 なぜWebコミックの運営者は「ファンが支える」という旧来のフリーミアムと異なるモデルを採用しているのか。

 ■「ユーザーの無関心化」という新たな現象

 この問いを解く鍵が、実は私たちは何を購入するかを選ぶのが「面倒」になっているという問題なのである。

 コンサルティングファームのアクセンチュアは、2019年6月に『“無関心化”する消費者と企業の向き合い方』と題する著名なレポートを発表している。世界35カ国の消費者にアンケート形式で実施したこの調査は、「先進国では3~4割の消費者が情報収集を行わないままに製品・サービスを購入する、いわゆる“無関心”の状態にある。先進国の中でも、日本はとくにその傾向が強い」と報告している。

 先進国ではどの製品もサービスも、値段や質がほぼ同レベルに収束している。ネット通販でほしい商品を検索しても、あとは表示された上位2、3件を眺めて、だいたいより売れているものを選ぶユーザーも多いのではないか。あるいは、単におすすめされたものをそのまま購入するユーザーも当たり前に存在する。

 実際、私たちの日常は情報がたくさんありすぎて、選ぶのが面倒になっている。このことは、「選択するという行為」が大きな労力を伴っていることを意味する。このため消費者は「判断すること」自体を重荷と感じ、そのためルーティンをずっと続けたり、深く吟味したりしないで購入してしまう。つまり「自分の判断でモノを選べる人が減っている」のである。

 ■運営側もコアなファン頼みではいられない

 このようなユーザーの無関心化が進んでいけば、フリーミアムモデルが課金の対象とする熱心なファンも減っていき、無関心なユーザーが増えていくことになる。すると、これまでネット上で主流だったフリーミアム型ビジネスモデルも成立が困難になり、消費者の状況に合わせて変更を迫られることになる。

 実はネットサービスを運営する側も、コアなファン頼みのフリーミアムモデルが限界に近づいていることに気づいているのではないか。なんとかしてボリュームゾーンである「無関心なユーザー層」に課金し、「無関心であるのにも関わらずお金を払う」メソッドを確立させないかぎり、サービスが立ち行かない段階に来ているのではないか。

 そうした状況がWebコミックをはじめとする「新作無料」という、どうやって成り立っているのか理解が難しいモデルに現れているのだ--。このように考えると、アクセンチュアのレポートとも辻褄が合ってくる。

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