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「ツタヤとは正反対」なぜアマゾンプライムは“新作無料、旧作有料”なのか (3/3ページ)

 ■無関心なユーザーはどこに反応している?

 「新作無料」というモデルにおいて、運営サイドは「コアなファン層」という存在を、課金の対象ではなく、SNS上で「これ、おもしろいよ」と広めてくれるインフルエンサーとして捉えているはずだ。

 無関心なユーザーは一般に、「これ、おもしろいよ」という広告をみても、購入意欲を喚起されない。なぜなら、広告には飽き飽きしており、また自らモノを選ぶ意志も減退しているからだ。そうした無欲な人たちに「お、読んでみよう」と意欲喚起させるためには、何をすればいいのか。

 例えばそのユーザーがフォローするSNS圏内の誰かが、「この作品はこういう意味でおもしろい」とか「この作品はこういう部分が斬新だから読むに値する」といった解釈・評価を行い、「こういうふうに読むべき」という「コンテキスト(文脈)」とともにそのコンテンツを提示してあげれば、それによって無関心なユーザーの興味も惹けるのではないか。

 実際、テレビ番組等でも、音楽を作曲レベルで解説することで、曲にコンテキストを与えるものが人気を博している。

 ■「最新話無料」は、布教活動の「対価」である

 つまり、無関心なユーザーが理解するのは、すでにコンテンツ単独ではなく、それに付帯する「コンテキスト」にあると言える。2020年に一大ムーブメントを巻き起こした『鬼滅の刃』も、作品が面白いのは当然として、多くの人々が口々に「作品論」を展開したことで、無関心なユーザーが「流行」を察知した結果と言えるだろう。

 つまり、無関心なユーザーもコンテキストをプッシュしてくれる人間がいれば、それに基づいてコンテンツを選ぶのである。

 このビジネスモデルにおいては、ファンを一般消費者向けの「コンテキスト製造機」として機能させることで、サービスの拡散を図り、それまで関心がなかった人を引き込む要素にしているわけだ。

 最新話を無料で読む熱心なユーザーには、「無料」というよりむしろ、布教者として活動することに対する「対価」が払われていると解釈すべきである。彼らはある意味で、サービス運営者のために(喜んで)労働してくれるとも言えるのだ。

 ■発想の転換が求められている

 このように、ネット世界においては市場の状況が刻々と変化している。サービスの提供側がそこを読み違えてしまえば、「魅力あるコンテンツを揃(そろ)えているはずなのに、なぜかサービスとして立ち行かない」という状況に陥ってしまう。

 プロモーションやマーケティングの現場では「お金はファンから取るもので、いかにコミュニティーを、ファンを創るかが課題だ」といった議論が未だに聞かれる。

 しかし、現状ではコアなファンだけを相手にしているサービスが次々と失速している。その背景は上述の通り、無関心化したユーザーが爆発的に増える中、世の中全体が「いかに無関心化したユーザーに向かったサービス設計ができるか」という問題軸の変更が生じているからだ。「ファンが来ていることは大事。しかし直接のお金を生み出す層はもはやファンではなくなっている」という前提から始めなくてはならないのだ。

 この連載では今後、こうしたマーケティングの発想軸の転換、ネットビジネスの中でも時代とともに大きく変わりつつある部分、とりわけ無関心化したユーザーに向けて変貌を遂げているサービスについて、リアルタイムの現象の中から事例を見出し、読者とともに読み解いていきたい。

 

 Screenless Media Lab.(スクリーンレス・メディア・ラボ)

 音声メディアの可能性を探求し、その成果を広く社会に還元することを目的として2019年3月に設立。情報の伝達を単に「知らせる」こととは捉えず、情報の受け手が「自ら考え、行動する」契機になることが重要であると考え、データに基づく情報環境の分析と発信を行っている。所長は政治社会学者の堀内進之介。なお、連載「アフター・プラットフォーム」は、リサーチフェローの塚越健司、テクニカルフェローの吉岡直樹の2人を中心に執筆している。

 

 (Screenless Media Lab. 構成=久保田正志)(PRESIDENT Online)

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