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コロナ禍で廃棄のビールをジンに 再生型蒸留所誕生

 新型コロナウイルス感染拡大で余ったビールなどの廃棄素材を生かした蒸留酒、ジンを製造するベンチャー企業が東京都台東区にある。スピリッツ製造・販売のエシカル・スピリッツで、2月には世界初とされる廃棄素材使用の酒造りに特化した再生型蒸留所をオープンした。緊急事態宣言の解除を見据え、7月以降には造った酒を提供するバーなども開く予定で、環境に優しい蒸留酒の未来を作るべく奮闘している。

 同社は昨年2月の会社設立直後に新型コロナの感染拡大が始まり、酒類業界の売り上げは大きく減少した。そこでバドワイザーなどで知られるビール会社「アンハイザー・ブッシュ・インベブ ジャパン」、老舗日本酒メーカーの月桂冠と協業。約8万杯分のビールを蒸留により特製ジンとして蘇らせ、昨年9月に発売した。

 ただ、エシカル社の目的はコロナ禍における余剰ビールの再利用ではない。山本祐也社長は「エシカル(倫理的=環境保全)な生産に特化した蒸留所として、捨てられる素材を使った循環型の酒造りを進めたい」と力を込める。

 同社では主に、日本酒の生産過程で生じ廃棄される酒かすを再蒸留し、素材や製法にこだわったクラフトジンを生産・販売している。その利益で酒かすを提供する蔵元に酒米を納品し、蔵元は日本酒を生産する。こうした仕組みで循環する経済と酒造りを実践。同社によると、酒かすのような廃棄素材を必ず使って酒を造る再生型の蒸留所は従来なかったという。

 蒸留所が設置されたビルには、造った酒を提供するバーや、クラフトジン造りに欠かせない、香り付けのハーブなどを栽培する屋上庭園も準備されている。7月以降のオープンを目指しており、「建物の中で素材の栽培、酒の製造、そして消費といった循環を感じられる」と山本社長。

 ジンの最大市場である英国にも営業所の設置が決まった。山本社長は「日本発の会社として、世界に通用する環境に優しい酒蔵メーカーというポジションを真剣に狙いたい」と話す。

(永井大輔)

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