メーカー

「iPhoneと同じことが起きる」アップルカーは3年以内に自動車業界を根本から変える (3/3ページ)

 ペロトンはオンライン販売のみならず、全米24のモールにリアル店舗を展開しています。それはフィットネスバイクを売るためではなく、顧客とのリアルな接点を作り、試乗体験などを通じて優れたカスタマーエクスペリエンスを提供するためです。テスラも同様にディーラー網を持たず、現在はインターネット販売と直営店のみです。

 アップルもアップルカーを販売するために同じ戦略を取るのではないでしょうか。すなわち、既存の自動車産業がディーラーを介した販売を行うのに対し、アップルは直接、顧客とつながろうとする。またアップストアと同様、アップルカー用のリアル店舗を展開してくると予想します。ただし、その店舗はセールスのための拠点ではなく、顧客に対してカスタマーエクスペリエンスを提供する場であり、コミュニティを育む場です。

 ■店舗とディーラーが果たす役割は決定的に変わる

 こうした新しい販売の形は、日本の自動車産業に対する大きな問いかけでもあります。

 「もう店舗はいらないのか、ディーラーはいらないのか」と結論を急ぐ必要はありません。すぐにリアル店舗がなくなることも、車を販売する人が不要になることもないでしょう。

 ただし、店舗とディーラーが果たすべき役割は、従来と決定的に変わるはずです。ただ売るための場所、売るための人のままではいられません。これからは大切なのは、コンシェルジュ的に顧客に寄り添い、関係を深めていくことです。

 アップルカーはおそらく、販売とサブスクリプションの両面で展開してくるに違いありません。サブスクは、単なる月額支払を意味するものではなく、長期的・継続的な関係性を顧客との間に築くための手段です。「売って終わり」にせず、売ったあとも顧客に伴走し、関係を構築していく。そのようなディーラー、セールスパーソンのあり方が問われてくる。アップルカーがもたらすインパクトは、それほど大きなものです。

 アップルカーの特徴を「理想の世界観」実現ワークシートに落とし込んだものが図表2です。従来の自動車産業と比較して、アップルカーがどれだけ顧客視点に根ざしたものであるのか、おわかりいただけると思います。 (立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授 田中 道昭)

 田中 道昭(たなか・みちあき)

 立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授

 シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略、及びミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)などを歴任し、現職。主な著書に『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』(以上、PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』(日経BP社)『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)などがある。

(PRESIDENT Online)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus