金融

アマゾン&グーグルの金融事業参入を、日本の金融界が放置するしかないワケ (1/2ページ)

 米大手IT企業による日本金融業への参入が相次いでいる。グーグルは国内の決済事業者を買収、アマゾンは銀行設立を目指して準備を進めている。経済ジャーナリストの森岡英樹さんは「日本は銀行業務への参入障壁が低い。このままでは日本の市場が外資に食い尽くされる」という--。

 ■グーグルが決済事業で日本を開拓

 米グーグルが日本で金融事業に本格参入することが明らかになった。国内のスマートフォン決済会社「pring(プリン)」(東京都港区)を買収し、2022年をめどに自社グループで送金・決済サービスを開始する。

 プリンに出資する複数の企業が7月13日、「グーグルからプリン株のすべてを取得するとの申し出があった」と発表した。買収総額は明らかにされていないが、プリンに約45%出資するフィンテック企業、メタップスは売却額を約49億円としている。

 グーグルは米国内でスマホを使った決済サービス「グーグルペイ」を手掛けているほか、米金融大手のシティグループなどと協力して、スマホの利用者向けに銀行の預金口座サービスを提供する準備を進めている。

 日本市場への参入は、米国でのスマホ決済サービスや預金口座サービス提供という戦略をグローバルに進める布石となるもので、先進国の中でキャッシュレス決済の普及が遅れている日本は開拓の余地が大きいと判断したと見られている。

 ■チャット感覚で送金できる手軽さが人気

 グーグルが買収するプリンは、2017年に決済代行のメタップス、ミロク情報サービス、日本瓦斯(ニチガス)、伊藤忠商事、ファミマデジタルワン、SBIインベストメント、みずほ銀行、SMBCベンチャーキャピタルなどが共同出資して設立した資金移動業者で、銀行口座を紐づけて入出金し、QRコード決済ができるアプリを手掛ける。

 みずほ銀関係者によれば「チャット感覚で送金できる手軽さが受け、若者層を中心に数十万人が登録している。特に残高を手数料なしで銀行口座に戻せる利点がある」という。

 また、国内スマホ決済事業者としては珍しく法人サービスも展開している。「業務用プリン」と呼ばれるサービスで、契約する約400社が社員の経費精算や個人事業主への報酬支払いに利用している。

 グーグルは、このプリン買収でどんな戦略を描いているのだろうか。

 ■ほしかったサービス機能を一挙に手にした

 グーグルはまず、プリンをグーグルペイのウォレット(財布)として活用すると想定されている。あるメガバンク幹部は、「グーグルはシンプルなこのサービスを起点に、送金や決済など他の金融サービスを展開していく戦略だろう」と予測している。

 米国で展開されているグーグルペイでは、送金などで受け取ったお金はいったんウォレットにプールされ、そのまま買い物や銀行口座から引き出せるほか、再び他者に送金もできる。

 グーグルペイは40カ国でサービスが提供されている。だが、こうした送金サービスが提供されているのは米国とインドのみだ。多くの国では、グーグルペイにカードを登録してオン・オフラインの店舗での支払いに利用できるのみとなっている。

 日本におけるグーグルペイも同様で、登録可能なカードや決済手段が限られており、「FeliCaチップを使った『おサイフケータイ』に依存する部分が大きい」(メガバンク幹部)とされる。

 一方、プリンの場合はセブン銀行のATM経由でウォレットへのチャージや現金の引き出しが可能だ。提携する銀行はメガバンク3行を含め50行を超える。

 グーグルはプリン買収を機に、これまでのサービス水準をブレークスルーし、より利用者ニーズに合致したサービス機能を一挙に手にすることができるという構図だ。

 ■グーグルの次はアマゾンか

 グーグルをはじめGAFAと呼ばれる巨大プラットフォーマーは、保有する膨大な顧客情報を生かし、金融事業に乗り出そうとしている。

 金融は隠れた成長産業だ。例えば、ソニーを見るとそれが分かる。

 「ソニーグループの収益を下支えしているのはソニー銀行などの金融事業です。金融は安定的に収益を上げられる有望市場になっている」(大手証券幹部)というわけだ。

 今回のグーグルによる日本の金融事業参入に続き、金融界が警戒するのはいまやEC(電子商取引=eコマース)の巨人として、世界の流通を席巻しつつある米アマゾン・ドット・コムが日本で銀行を設立できるかどうかだ。2018年には米銀大手のJPモルガン・チェースと組んで、若者層や銀行口座を持たない顧客を対象に米国内で金融サービスを提供することを検討していると報じられたことがある。

 顧客がアマゾンのサイトで買い物をする際に、アマゾンブランドの銀行口座から直接、商品の代金を支払えるようにするほか、顧客が小切手を切ることができたり、ATMを利用できたりすることなどが検討されているという。即時決済機能を中心とする金融サービスをグループ内に取り込むことで、コスト削減と顧客サービスの向上を同時に実現しようという構想だ。

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