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軽の守護神・鈴木修氏の引退「新技術がわからない」 自動車産業の崩壊が始まる (2/2ページ)

 鈴木修氏が唯一恵まれなかったもの

 数々の苦難を乗り越え、スズキを世界的な小型車メーカーに育て上げたカリスマ、鈴木修氏にとって唯一恵まれなかったのは後継者だろう。鈴木修氏は2000年に代表権を持つ会長に就き、社長の座を戸田昌男氏に譲った、さらにその後任の津田紘氏も含め2代続けて社長が病に倒れ、鈴木修氏はリーマンショック後の2008年12月に兼務で社長に復帰した。

 この間、後継者の本命とされていた経済産業省出身の女婿、小野浩孝専務役員も2007年に病気で他界するなど、スズキを相次いで悲劇が襲った。その意味もあり、鈴木修氏に「生涯現役」の意を決しさせたのかもしれない。

 カリスマが去った後に大切なこと

 修氏が後継者に苦悩したように、カリスマ経営者にとって後継者の人選が最大の課題であることは言うまでもない。

 カリスマの影響力の大きさとその抜けた後のギャップの大きさは日産自動車が代表的な例だ。会長だったカルロス・ゴーン被告は典型的なトップダウン型経営と圧倒的な求心力で日産を見事によみがえらせ、ルノー、三菱自動車の日仏3社連合でトヨタ、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)と世界市場で覇権を争うまでの存在に育て上げた。

 しかし、ゴーン被告の逮捕から2年半余りを経た日産、さらに3社連合の経営の現状はトヨタ、VWに大きく水をあけられ、日産は2022年3月期に3期連続の連結最終赤字に陥る見通しで、その低迷ぶりが際立つ。日産の場合はトップの逮捕という特異な例とはいえ、カリスマ経営とその後の落差を鮮明に印象付けた。

 長くカリスマが経営を担ってきた企業は「成功体験」に陥りがちだ。しかし、カリスマが去ったあとは、新たな経営体制が求心力を持ち、成長を維持していくことが求められる。

 鈴木俊宏社長の率いる集団指導体制のスズキはどうなるか。「効率経営」を軸とした「オサムイズム」を引き継ぎ、存在感のある小型車メーカーとして存続できるのか。市場の目はその一点を見つめている。(経済ジャーナリスト 鈴木 伸男)

 鈴木 伸男(すずき・のぶお)

 経済ジャーナリスト

 早稲田大学法学部卒。専門紙記者を経て、全国紙で経済分野の記者、デスクを計34年務め、経済官庁、民間経済の幅広い分野を担当。2021年7月に独立。宮城県出身。

(PRESIDENT Online)

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