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「東電管内で停電リスク」中国の“LNG爆買い”で危険度を高める日本の電力不足 (2/2ページ)

 ■カタールと日本の電力会社らが結ぶ25年契約が終了

 新電力の淘汰・再編以上に深刻なのが、日本の製造業などへの生産活動にも影響を与えかねない大手電力の経営問題だ。

 大手電力は、政府が進める電力の自由化と脱炭素の「ダブルパンチ」に直面している。大手電力は自由化前までは「総原価方式」で燃料代の上昇分は電気料金に上乗せできたが、自由化後は、新電力の台頭でそれができなくなった。

 またLNGについては、在庫損を防ぐために、その時々の在庫の状況を見ながらスポットで契約する「随時契約」に舵を切っているが、そのスポット価格が中国の爆買いで上昇している。

 中国の「爆買い」によるLNG市場での台頭は、調達国とLNGを供給する産ガス国との関係も変える。

 例えば、2021年末に日本の電力・ガス会社など7社と結んでいる中東・カタールと結んでいる25年間のLNGの供給契約が切れる。カタールは日本のLNG輸入の約1割を担うが日本の電力・ガス会社7社が結んでいる25年間のLNG契約が終了する。

 カタールがLNGの供給国として存在感を高めた陰には日本の存在がある。湾岸戦争の翌年の1992年、中部電力が先頭を切って契約を結んだ。当時のカタールは湾岸戦争の影響もあり経済が混乱していた。復興のために見出したのがLNGの輸出だ。三井物産などが少数株主として開発の合弁プロジェクトを立ち上げた。

 ■カタールにしてみれば、中国になびくのは自然

 カタールにとって日本は湾岸戦争からの復興をサポートしてくれた「恩人」ともいえる存在で、長く両国の関係は良好だった。しかし、そこに中国が割り込むことになる。

 この冬に東アジアを襲った寒波は中国にも波及し、カタールなどにも調達の手を広げた。一方、日本はLNGの調達先を分散するために中東依存を減らす動きを強めており、カタールが望む長期契約に揺らぎが生じている。「足りなくなった時に一時的にカタールに発注するスポット契約が多くなってきた」(大手商社)。

 そんななか、3月に入り、カタール国営石油会社は合弁会社に参画している米エクソンモービル、三井物産、丸紅などの出資を22年1月に解消すると発表した。LNGで生計を立てているカタールにとって、安定的に大量のLNGを買ってくれる「お得意様」を優先するのは理にかなった話だ。日本は米国やインドネシア、ロシアなど最近になってLNGのプロジェクトを立ち上げている。日本が相対的にカタールとの取引の比重を下げているとすれば、カタールが今や日本を凌駕する購買力を持つ中国になびくのは自然だ。

 日本にとってまだLNGは電力燃料として必要だが、脱炭素の流れを受けて太陽光や洋上風力など再生エネルギーに置き換えようとしている。カタール以外からの調達先の確保も急いでいる。大手電力各社は「足りなくなった時にスポットでカタールからLNGを調達すればいい」と考えている節があるが、カタールにしてみれば「そんな都合よく売れない」ということになる。

 ■新電力も加えた業界は「総倒れ」の状況に

 LNG火力が厳しいなか、日本の大手電力にとって最後のよりどころは原発だ。関西電力は美浜原発(福井県)が運転開始から40年を超える原発として初の再稼働にこぎつけた、「結局、日本の脱炭素のカードは原発しかないのか」との批判の声は多い。

 不完全な自由化のなかで推し進めようとした脱炭素の大号令で、新電力も加えた業界は「総倒れ」の状況に直面しつつある。中国のLNG爆買いで、LNGの調達価格はあがり、それが日本の電気料金の上昇に跳ね返ってくるのも時間の問題だ。電気料金が上昇すれば、自動車や電機業界など製造業は競争力を維持するためにも生産拠点を海外に移さざるを得なくなる。その動きがさらに日本国内の電力需要を弱め、電力会社の経営を悪化するという悪循環を引き起こす。

 LNGも化石燃料であるため、脱炭素の世界的な潮流の中で依存度を減らす必要があるのは事実だ。しかし、偏西風が恒常的に吹き、安定した風力発電ができる欧州とは地理的条件が違うため、すぐに再生エネルギーにシフトすることは日本にとって現実的ではない。

 「地球環境保護」を全面的に掲げ、自国に有利に働くように政策誘導をする欧州に対して、「日本の国情をもっと対外的に説明すべきだ」との声は政府内にもある。しかし、原発や再エネをどういう形でつなぎながら中長期的に脱炭素に向けてエネルギー戦略を練り上げていくかという議論は、東電の福島第一原発事故以降、政府は本格的な議論を避けてきた。中国が日本に代わり、LNGの輸入大国になれば、エネルギーの安定調達が不安定になり、日本の産業を支える安価で安定的な電力供給の課題がまた一つ増えることになる。

 (プレジデントオンライン編集部)(PRESIDENT Online)

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