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GMの「EV車発火リコール騒動」で露呈した“韓国製バッテリー”の問題点 (2/2ページ)

 ■発火はサムスンSDIのバッテリーでも

 それだけに、リコール問題はGMにとってEV戦略の躓(つまづ)きといっても過言ではない。NHTSAによると、2020年11月、ボルトEVのバッテリー発火を理由にリコール(ソフトウェアのアップデート)が実施された。しかし、それでも対応は十分ではなく、再び充電中の発火が報告され今回のリコールにつながった。

 2017~2019年モデルのボルトEVが今回のリコールの対象だ。NHTSAは所有者に対して屋外、あるいは家屋から離れた場所に対象車両を駐車し、夜間は充電すべきではないとの対応策も公表した。

 韓国企業が製造する車載バッテリーからの発火は、ボルトEVだけではない。韓国国内ではLG化学製のバッテリーを搭載する現代自動車のEV、“コナ・エレクトリック”の発火問題が続いてきた。また、米フォード、独BMWでも搭載されているサムスンSDI製のバッテリーに起因する発火が起きている。中国メーカー製の車載バッテリーによる発火も起きている。

 ■安全技術よりも価格競争を重視した結果…

 その一方で、わが国の自動車メーカーが生産するHV、PHV、EVに関して発火事故の発生などは報じられていない。その差は、安全性に対する企業の考え方の違いにある。わが国企業は過酷試験などのテストを徹底して行い、速度、温度、湿度(水分)、埃(ほこり)、油脂などの付着など、さまざまな環境下で安全に、安心して使用できる自動車の製造技術を磨いてきた。

 足許の中国や北米市場での日本車の販売増加は、そうした技術への評価の裏返しだ。当たり前だがバッテリーを含め、安全技術の向上にはコストがかかる。

 韓国企業が生産するバッテリーの発火問題は、韓国企業がわが国企業と同等の技術を確立できていないことを示唆する。韓国企業は価格競争力の強化を安全技術の向上よりも優先したといえる。それによって、LG化学などは車載バッテリー市場でのシェアを獲得した。

 しかし、韓国企業がその姿勢で成長を目指すことは難しい。足許、韓国企業は中国企業に追い上げられている。中国政府は研究開発費を積み増し、企業の製造技術の引き上げと、製造原価の引き下げを重視している。LG化学にとって発火問題はCATLなど中国の競合企業を利することになりかねない。

 ■市場の分業化に韓国企業は対応できるか

 今後の展開として、車載バッテリー市場では二極化が進む可能性がある。耐久性など品質の高い素材やパーツの生産面で、わが国の企業には比較優位性がある。その一方で、生産コスト面では当面は中国、長い目線で考えると他のアジア新興国などが優位性を発揮するだろう。

 中長期的な世界経済の展開として、わが国企業が素材を供給し、それを中国や他の新興国の企業などが調達して車載バッテリー生産の国際分業が進む可能性がある。そうした変化に、韓国企業がどう対応できるかは見通しづらい。

 また、完成車メーカーレベルでは、GMがホンダとの提携によって車体の共有化や燃料電池の共同開発などを進めている。今回のリコールはGM、さらには米国の消費者がわが国のモノづくりの力をより需要する機会になり得る。それは、わが国の自動車メーカーが手掛ける電動車への需要を支える要因にもなるだろう。自動車メーカーやそのサプライヤーをはじめわが国企業は安心、安全を支える技術に磨きをかけ、最先端分野でのその活用をよりスピーディーに目指すべき時を迎えている。

 

 真壁 昭夫(まかべ・あきお)

 法政大学大学院 教授

 1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。

 

 (法政大学大学院 教授 真壁 昭夫)(PRESIDENT Online)

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